アプローチ
人は理性脳で(思考し)行動する動物ですが、アプローチを受ける場合は動物脳でとらえ判断することが少なくありません。しかし、乳幼児でもない限り、動物脳での判断をそのまま行動に移すことは少なく患者側の反応から臨床上の“アプローチミス”を認識させらされる機会は稀なのです。さらに、関わりを希望したのは患者ですから、治療家はアプローチを受けた感覚での対応を取りやすくなります。しかし、臨床現場では出会いの過程と無関係に患者がアプローチを受ける立場となります。臨床現場で生じた治療家側の“アプローチミス”は、患者を“情動由来の交感神経緊張状態”へ導きます。情動由来の交感神経緊張は、診断や施術法を誤らせ施術効果の低下や初診患者が去っていく大きな原因となります。教師猫が最も厄介と考えているのは、これらの事実認識に著しく欠ける治療家が少なくないことです。情動と理性脳との関係は〔情動と理性脳〕~〔情動と理性脳(10)〕を参照して下さい。
教師猫流アプローチ法
あくまで、教師猫流アプローチ法です。マニュアル化するほどの確信はありません。参照程度に留めて独自の方法を考案して下さい。(教師猫流アプローチ法によって生じた事態の責任は一切負いません)
〔アプローチの前に(2)〕の視線効果の実技風景で概説しましたが、日本人には独自の立位姿勢がありこの姿勢から、顎を水平位置まで上げて視線を送るだけで、相手の恐怖や警戒心を強めてしまいます。視線の位置は相手の目ではなく、唇の位置程度が良いようです。(臨床前に実験で確かめて下さい)
相手に接近する場合、接近前に相手にこちらの“接近意思”を伝えて下さい。伝達法は軽い会釈などのボディランゲージが良いでしょう。相手に“接近意思”が伝わり、こちらの接近を認めてくれても、急速な接近は厳禁です。まず、相手の運動能力を考慮した、適切な“接近速度”があることを認識して下さい。適切な“接近速度”で接近し、相手がこちらの全身を一望できる距離(通常、接近者の身長程度)で立ち止まって挨拶を交わします。この、一旦立ち止まる距離や挨拶を行なうまでの停止時間は要注意です。これら接近者の一連の動作に本能的(反射的)に反応するのは、相手の理性脳ではなく“情動脳”です。通常、相手は本能的な“情動脳”の働きを瞬時に理性脳で制御します。ですから、相手の情動的興奮がそのまま接近者への対応行動に反映することは少なく、その程度もポリグラフや心電図検査では陽性を示しますが専門知識やそれらの認識に欠ければ見落とす程度のものです。
説明が重複しますが、瞬時に理性脳で制御され、相手に自覚もなく、器機を用いた精密検査でなければ証明できない程度の“情動由来”の交感神経興奮を教師猫が力説する理由はこのことやこのことへの対策が押圧法の診断や施術法を誤らせ施術効果の著しい低下を招く重要な要素であるにも関わらず全くと言っても過言ではないほど、認識されていないためです。情動脳に由来する交感神経の興奮は、わずかな刺激で容易に『正のフィードバック』を起こし、理性脳との間に非常に激しい摩擦を生じます。
一旦摩擦を生じた情動と理性脳との関係は、情動と理性脳~〔情動と理性脳(10)〕を参照して下さい。
押圧法は手技です。ですからここで語るべきは手技手法です。事実、いかに患者が“情動由来”の交感神経興奮状態でも、施術を拒否されない限り、『娘の笑顔に妬けちゃいました』と〔暗号だそうです〕にも記載されたように、それらを御する技術(手技手法)が押圧法には存在します。しかし、患者を無意味に治療効果が低下する、交感神経異常緊張の『正のフィードバック』スパイラルに誘うことはありません。