乳腺炎
初産婦の授乳期に多い、乳腺の細菌性感染による急性炎症です。原因菌は主に黄色ブドウ球菌です。手指などによって運ばれる乳頭からの上行性感染が主で、症状は乳腺の腫脹・発赤を来し疼痛のため安静を保てないことも少なくはありません。消炎鎮痛剤や原因菌の抗生物質の投与ならびに局所への冷湿布などで対応されますがホルモン剤投与や膿瘍形成のため切開に至ることも少なくはありません。
乳腺炎の主因
理論的に感染症は、起因菌と感染経路の存在と感受性の条件が満たされ発症します。予防にはこれらの条件を欠くことですが、乳腺炎は発症前に乳管の開通不十分による乳汁うっ滞が多く観察されます。乳腺炎の予防や治療には乳汁うっ滞の改善が最良と考えます。
乳房の断面図
乳房の断面図(上)と乳腺の模型図(下)の細部説明は略します。乳汁は乳腺で作られ乳管に導かれて入頭部の乳口より分泌されます。乳腺炎の病理に乳房の構造を加味して考慮してください。
乳腺の模型図
乳汁は乳腺で作られ、乳管に導かれ、乳管洞に貯留された後に、それぞれの乳口より分泌されます。
哺乳中の乳房
未産婦の乳房と哺乳中の乳房および乳房周辺の血管を観察すると、哺乳中の乳房および乳房周辺に著しい血管拡張を認めることができます。下の写真は観察しやすいように画像処理を施しました。
この画像で示すことはできませんが、哺乳中の乳房および乳房周辺の温度上昇を推測してください。
乳管に導かれ乳管洞に貯留された乳汁は、乳房および乳房周辺の体温により、水分が奪われやすく、乳管洞の構造上、乳管洞内で固形化した乳汁は、乳口を塞ぐ栓の役割をはたします。
細菌性感染がなく乳腺炎に至らずとも、乳汁分泌による乳房内圧の上昇により疼痛が生じます。
乳腺炎の症状
乳汁うっ滞性乳腺炎患者の施術後(翌日)の写真です。当院患者の紹介で急患として来院されました。激痛のため病院で「これ以上やって、あなたが気絶しても困る・・・」と施術を中断されての来院でした。罹患部位は右の乳房で、来院時は乳汁うっ滞により乳房の変形と腫脹が著しく、問診さえも苦痛という状況でしたが、乳汁うっ滞は苦痛なく改善でき、切開を免れることができました。初診時の不安と疼痛に耐えていた表情が安堵の笑顔に変わる瞬間は何度体験しても言い表せない感情です。患者の希望により翌日も施術しました。施術前に「本当は昨日撮影したかったんだけど」と笑いながら撮影させていただきました。写真にカーソルを重ねてください。右乳房の炎症を観察していただけると思います。