第5回 ボールとビー玉
ボールとビー玉による訓練法
押圧操作は把握動作を必須とします。テニスボール訓練法で母指及び母指球を鍛え、ビー玉訓練法で小指及び小指球を鍛えます。これらの、母指球筋および小指球筋の鍛練操作は加圧動作の訓練法ではありません。これは、完全母指対立獲得のための手段です。加圧動作とは、手指操作以降の動作を呼びます。ボールやビー玉や訓練法は手指操作以前の操作なのです。手指操作習得をゴルフの練習に例えれば、“クラブの正しい握り方の習得”に相当します。完全母指対立の獲得は押圧法習得の基本の基礎作りとなり、確実な習得練磨が不可欠となります。
テニスボールの準備
【テニスボール内圧の調整】
軟式テニスボールと専用の空気入れを準備します。母指及び母指球を鍛え、完全母指対立機能の獲得を目的とする訓練のための道具です。片手母指操作でボールの臍部と対極が接するまで押し込み訓練を行ないます。テニスボールの内圧が高すぎると母指に負荷がかかり、母指を痛める原因となります。ボール内部の空気を専用空気入れで抜いて内圧の調節をします。最初は正しい操作を習得するために内圧はやや低めに設定します。但し、無負荷時にボールが球形を保てなくなるほどの減圧はしない。
練習を重ねるにつれ、テニスボールの弾力が下がります。テニスボールの内圧を調整してください。
上達に伴い、テニスボールの内圧調整が必要になります。詳細は担当講師の指導に従って下さい。
テニスボール訓練法
【テニスボール訓練法:基本の基礎編】
母指指紋部でテニスボールの母指側をドーナツ型に押し込み、中指指紋部と対立させる訓練です。
四指は、指圧部位を把握し、加圧しない『支え操作』の訓練です。
最初は母指及び母指球を鍛えます。次に、完全母指対立機能の獲得を目的とします。
《操作手順》
写真の番号順に操作を行なってください。
写真1:ボールの臍部を確認します。〔青色シールの部分が臍部〕
写真2:ボールの臍部に中指指紋部を当てます。示指、薬指、小指は中指に添えます。
〔写真では臍部(シールの位置)が見やすいように指先を浮かしています〕
写真3:対極部に母指指紋部を当てます。
〔写真では見やすいように指先を浮かしていますが、必ず指紋部を当ててください〕
写真4:再度、手指位置の確認をします。〔写真3の状態の角度を変えた写真〕
写真5:母指球筋に力をいれ母指指紋部中央に臍部を感じるまで、母指を押し込みます。
〔母指球筋のみの操作で、10~15秒間持続し繰り返します〕
写真6:母指を押し込むとき、四指は固定します。〔写真5の状態の角度を変えた写真〕
《アドバイス》
指圧研究会・咲晩スタッフ養成講座では、各人のレベルを判断し、個々にレベルの異なるボール訓練法や注意点を指導しています。上記したボール訓練法は基本の基礎です。基本は習得しても終了を意味するものではありません。押圧操作のレベル向上に伴い、ボールでの訓練不足を痛感させられます。
多くは自己嫌悪に陥ってしまうのが現実です。テニスボールの訓練は不思議な訓練です。訓練すればするほど、難しくなっていきます。それを“ボール地獄”と呼んでいます。
〔押圧法の真髄を求めればボール地獄から開放される術はないと考えます〕
テニスボール訓練の3悪例
左:指尖部で加圧しています。中央:四指で加圧しています。右:指根で加圧しています。
ビー玉訓練法
【ビー玉訓練法】
小指及び小指球を鍛え、完全母指対立機能の獲得を目的とします。
《操作手順》
小指のみで、ビー玉を挟み、そのまま小指を小刻みに動かします。
《注意と心得》
- 1. 掌部にビー玉を触れさせない。
- 2. 練習後に小指の伸展を十分に行なってください。
押圧操作時の注意と心得
【押圧操作時の注意と心得】
テニスボールやビー玉の訓練動作には、加圧動作との共通性は含まれていません。
診断即治療の技術習得や加圧動作による手指の疾病予防に必要な完全母指対立機能の獲得を
目的としています。押圧操作時には、必ず手指操作の基本形で手指を加圧点に接してから、
つかみ(Precision grip)動作に移行するように注意して下さい。
押圧法(押圧操作)において、母指球筋の筋力による加圧は厳禁と心得て下さい。
日常の生活動作においても小指の動作を意識してください。あらゆるものに触れる時、つかむ時、
小指の操作を意識してください。小指から触れ、またはつかむように手指を操作して下さい。
観察しましょう
【テニスボールのたるみ観察】
日々、訓練を続けていくと、テニスボールも疲労してきます。母指指紋部が当たる部分に
“たるみ”が生じます。このたるみを注意深く観察してください。
- 1. テニスボール臍部の対極にたるみの中心がありますか?
- 2. たるみの中心にテニスボール臍部の跡を発見できますか?
【母指と四指の観察】
テニスボールを使用せずに中指指紋部に母指指紋部を当てて下さい。
- 1. 中指指紋部に対し母指指紋部が完全に対立していますか?
- 2. 母指球筋に十分力が入っていますか?
- 3. 四指は卵を包み込むような形状になっていますか?
ボールの遊びと、遊びをとる操作
【ボールの遊び】
母指指紋部が当たる部分に生じたボールの“たるみ”を「ボールの遊び」と呼びます。
ボールの遊びとボールの内圧不足による凹みとは異なりますので、混同しないでください。
【遊びを取る】
ボールの遊びを取る動作を「遊びを取る」と呼びます。
テニスボールを使用した練習では母指操作によって遊びを取ります。
しかし、押圧操作時には肘関節操作が中心となります。
ここでは“ボールの遊び”と“遊びを取る操作”を手指操作のイメージとして覚えてください。
遊びを取る操作は、診断即治療の基本の基礎となる必須操作ですから、十分意識してください。
≪遊びを取る操作は加圧操作ではなく、手指操作のつかみ(Precision grip)動作です。≫