第21回 押圧法概論(4)
少々反省・・・しかし続行
“押圧法概論”と題して書き始めたことは、少々誤りのようである。なぜなら、このホームページ全体が“押圧法概論”としての要素を持っている。さらに、記載内容の多くが押圧法に対する“イメージ的表現”であり、〔指圧研究会・咲晩〕咲晩メンバーに限らないが、具体的な疾病治療専門の手技を学ぶ人には、ある箇所で具体的イメージを創造し、理解したと捉えた内容を別の箇所で否定してあり、一読すると、『理解できたような錯覚』を与え、二、三回読むと具体性に『混乱』を生じ、さらに、読み込むと、“最初に捉えた内容と全く異なる具体性”が見えてくる。といった宝探しゲームを楽しんでもらっています。
本HPは、〔指圧研究会・咲晩〕スタッフ養成講座受講生および『てのひらの会・咲夢』会員の副読本で、講義内容の復習用教材としての活用を願うものです。他に、一般読者の押圧法に対する理解を得たいとの希望もありますが、具体的手法の記載による“無資格者の教材化”は回避すべきと考え、一般読者には『押圧法は他の手技とは異なる』といったイメージ的理解を得られる範囲の記載に留めています。
“押圧法概論”と題して書き始めたことを少々反省しながらも続行します。表題は押圧法概論と題しても何が出てくるかわかりません。臨床の場で重要となる要素を“点線面立方式”にて概説していきます。
疑問は必ず質問することを忘れずに、表題にこだわらず、“宝探しゲーム”と楽しんでください。
施術の前に
臨床現場で『○○の症状には△△の治療点を何回』という、教科書的思考法や施術法は適しません。臨床現場では、まず『誰に、誰が施すか』から入ります。初診患者さんの心は『疑心暗鬼』そのものです。 〔対応-1・ 2 ・3参照〕。 しかし、心の底に『治りたい』という希望と期待があり、来院されたはずです。 〔慰安家と治療家〕や 〔施術依頼者への対応〕を守り、絶対に治療家として対応してください。
教師猫の場合は、独特の〔『治療室での慣習』〕で対応しますが、予約時点で、“治療家として対応する”ことを確立しておくことが重要です。このことで、『誰に誰が施すか』が『患者に治療家が施す』に変わり、いかに、患者さんの『疑心暗鬼』や『メンタルディファンス』が強くても、施術準備は受け入れてくれます。
患者さんへのアプローチ、特に接近動作に十分配慮してください。『疑心暗鬼』や『メンタルディファンス』を解除できなくとも、アプローチミスによる、情動の『正のフィードバック』は絶対に避けねばなりません。さらに、患者さんの愁訴に『○○の症状には△△の治療点を何回』という教科書的思考法や施術法に捉えられないために、一旦は愁訴を無視した全身の他覚的診断を行い、愁訴との関わりを判断します。愁訴と他覚的診断結果に対する自覚を促し、他覚的診断結果改善の意義を明確に伝えてください。
治療点をとる前に
他覚的診断結果を基に施術部位を決定し、施術に入りますが、その前に、施術重要部位と関連部位の部位別の『マッスルディファンス』を確認します。他に無関係部位の『マッスルディファンス』を知ることで『メンタルディファンス』を推測することができます。(呼吸や心拍数あるいは精神性発汗なども考慮する)
『マッスルディファンス』と『メンタルディファンス』を判断し、区別した後に、『マッスルディファンス』をその種類別に分けていきます。医学用語でいう“ディフェンス(筋性防衛)”と混同しない知識が必要です。
【疼痛によるマッスルディファンス】
疾患による疼痛や内臓体壁反射が主な原因で、疼痛部位に医学用語でいうディフェンス(筋性防衛)が生じます。ディフェンス部位はわずかな不適圧にも激しい、『マッスルディファンス』を生じます。しばしば、不用意な触診にも激しく反応します。ディフェンスと『マッスルディファンス』の区別が認識されず、曖昧になりやすいことへの認識が必要で、被術姿勢の改善や掌圧によるディファンス解除法が有効です。
【筋萎縮によるマッスルディファンス】
疲労性萎縮や不動性萎縮に関わらず、萎縮部位では『伸張反射』などの“生理的反射”や“病的反射”を問わず、骨格筋に反射亢進が生じやすくなります。さらに、萎縮部位は血液循環不良等を原因とする過緊張による圧過敏も加わります。『マッスルディファンス』の多発地帯ですから、被術姿勢のみならず、加圧による伸展なども筋痙攣や種々の発作の誘因となりますので十分な認識と注意が必要です。
【生理的マッスルディファンス】
加圧に伴って生じる生理的なマッスルディファンスで、押圧法では日常的に『ディファンス』と呼びます。過剰な不適圧に対し反射的に顕著に生じるマッスルディファンスですが、過小圧や不適な加圧時間でも生じます。初級レベルでは、押圧効果の妨げとしかならないものですが、中級・上級になれば、自在に操ることで押圧効果の幅を広げることができます。
マッスルディファンスは、施術者に様々な情報を提供してくれます。まず、マッスルディファンスに対する認識を持ち、解除法を習得してください。解除法の習得により患者さんとの“力相撲”から解放されます。
“自支としめ”の確認
加圧前に“自支としめ”を確認してください。“自支やしめ”が適切でないと押圧効果が望めないばかりか危険度が上昇します。特に、“自支やしめ”不十分から生じる『突き上げ圧』には危険認識を十分に持ち注意してください。もちろん、“自支やしめ”不十分から生じる『突き上げ圧』は、押圧操作や押圧圧とは呼べないものですが習得過程で生じる危険性があります。〔復元圧〕は論外ですが再認識してください。