第15回 養成講座受講生各位
押圧法とは
本来の指圧で、疾病治療を目的として、浪越徳治郎先生によって創始された独自の手技です。
押圧法の独自性(押圧)に対する認識の浅深は、その後の押圧法習得に重大な影響を与えます。
生体はストレス(生体に防衛反応を起こさせうる刺激)に対し様々な防衛反応を示します。これらは生体を健康または疾病へと誘います。中でも、力学的刺激の影響は大きく、多くの疾患の主因または誘因となっています。急激で過剰な力学的刺激を原因とする疾患の予防はこれらの回避です。多くの慢性的な力学的刺激を原因とする疾患においては、疾病の機序(メカニズム)を解明することで、疾患原因としての力学的刺激の影響や悪循環を見出すことができます。それら疾患原因としての力学的刺激や悪循環が顕著になるに伴い、これらに対応するのは対症療法としての薬物療法や外科手術等ではなく、多くの慢性的力学的刺激や悪循環に対応できる押圧法(高度な手技療法)であることが著明となります。
〔備考〕
人類は遥か昔より数多くの療法(医療行為)を行なってきたと考えます。試行錯誤し多くの療法が生まれては消えていったと考えます。中でも、手技療法の歴史は長く、3~5千年と言われていますが、療法を“手当て”と呼ぶことを考慮すれば、手技療法は人類発生と共にあったと考えます。手技療法の起源はともかく、現在まで数千年間も受け入れられてきた手技療法ですが、安易な自覚症改善の施術法は近い将来に衰退していくと考えています。その最大の論拠は近年の検査機器の精度向上や医学理論の進歩にあります。従来の治療効果の判定が『自覚的判定』に委ねられ自覚症状の改善が疾患の改善と判断されてきた疾患に、医学的論拠が乏しいことや他覚的改善が認められないばかりか悪化が証明されています。その一例が肩こりです。患部への施術による血行改善による症状緩和に伴う鎮痛効果と説明されていたものが、1990年代に発見された脳内ホルモンによる 『苦痛効果』 であることやMRI画像により施術部の炎症や繊維化等の悪化が認められています。
検査機器精度向上に伴い、脳や筋肉の力学的刺激に対する生理作用がより明確になりつつあります。特に、力学的刺激に反応する脳の様子を視覚的情報に変換する機器の研究や開発、さらに実用化や精度の向上は目覚しいものです。長年、臨床的経験により「私は脳を指圧している」と唱えてきました。『教師猫押圧法理論』が他覚的な検査機器により裏打ちされはじめています。真に嬉しいかぎりです。
押圧と押圧状態
押圧法の押圧とは、押圧法による加圧を呼びます。押圧状態とは、加圧された器官の状態を表す用語で外部的圧力による器官の変化が圧迫状態に至らない加圧状態を呼びます。動脈に対する“押圧圧”と“圧迫圧”を示せば、加圧対象となる動脈の最低血圧以上から最高血圧未満までが押圧圧、最高血圧以上の圧が圧迫圧となります。押圧圧が器官に与える作用と圧迫圧による作用とでは著しく異なる場合があることを十分認識することも重要です。
押圧法を習得すると
生体はストレス(生体に防衛反応を起こさせうる刺激)に対し様々な防衛反応を示します。中でも押圧圧に対しては一定の科学的(再現性の高い)生理的反応を示します。押圧法は生体を押圧することにより生体に生じる一定の科学的生理作用を利用し、疾病予防や疾病治療に役立てることを目的とした手技療法です。押圧法を習得すれば“自在な押圧”が可能となり、押圧によって生体に生じる一定の科学的生理作用を自在に操作することができます。押圧法の習練は効率よく“自在な押圧”を可能とする技術習得や加圧による患者に対する危険回避などを目的としています。
危険の回避
押圧法では、施術者が自分自身を如何なる施術姿勢においても自支する技術を習得します。 この技術は自在な押圧の基本となる技術でもありますが、患者に施術による危害を加えないための基本的技術でもあります。患者に対する危険回避は、医療従事者として治療効果や治療効率を上げることより優先され厳守されるべきことです。蛇足的説明となりますが、背部痛を訴える患者の背部を自支なしで加圧したと仮定します。激しい筋性防衛や患者の苦悶の表情を察知しても、自支なくしては圧の瞬時停止も減圧も間々なりません。背部痛を訴える(訴えなくとも)患者に肋骨等の骨折(レントゲン検査でも発見が困難なわずかなヒビなど)や悪性疾患等が潜んでいないと断言できるでしょうか。自支なしの施術では診断即治療はおろか、常に患者を危険にさらし、自らも治療家生命をかけた愚かな施術といえます。
押圧法では支点や力点を定めない押圧操作を行ないます。これは加圧点の移動に伴い支点や力点を変化させることではなく、同一加圧点であっても複数回加圧する場合は、その都度、支点や力点を変えて押圧操作を行なうということです。この操作の習得は患者や施術者の姿勢を問わず、あらゆる状況で確実な押圧効果が期待できる高度な押圧操作の習得および施術を業とする以上避けられない長時間(長期間)に及ぶ一定の施術姿勢による特定部位の疲労(職業病)予防を主な目的としています。
養成講座受講生諸君
押圧法を習得すると押圧効果を自在に発揮することができるようになります。押圧効果については随時HPに掲載していきますが、自分自身の習練レベルと平行した押圧法理論を学んでください。ここで掲載した内容についても、自支操作の重要性は仮に習得レベルが低くても理論認識として重要です。しかし支点や力点を定めない押圧操作についてはイメージ認識程度に留めてください。習得したレベル以上の押圧法認識や理論的理解が空論となり、時として基本操作習得の妨げとなる場合があります。現在〔指圧研究会・咲晩〕スタッフ養成講座担当講師は同講座受講生のカルテを製作し、より充実した個人指導を行なっています。HPの全員を対象とした内容を習得するよりも、個人指導を厳守するほうが技術向上の近道であることを認識してください。