第29回 加圧精度の習得(2)
指型について
指型に、“甘手”と“苦手”がありますが、あん摩マッサージにおいてはそれぞれの特徴を生かした手技があり、独自の訓練法が存在します。指圧業界においても本来の指圧である『押圧法』の継承者より、圧迫法を用いる指圧師が圧倒的に多いため、指型が云々されることも少なくありません。さらに、様々な指型矯正訓練が存在し、これらによる“指の変形や疾患”または指型への悩みが多く発生しています。
〔押圧法の必須と非必須条件〕でも概説しましたが、本来の指圧である『押圧法』では母指の指紋部を加圧点に密着させ、母指を固定し加圧操作に移行します。そのため、指型と押圧効果は無関係です。重複しますが、押圧法において“母指操作”は加圧操作には全く関わりません。確かに、手指で押すから指圧と命名されました。さらに、指圧で最も加圧に関わるのは母指です。その母指が加圧操作に関わらないとは、“奇異なことを言う”と感じられるでしょうが、押圧法において“母指操作”は加圧操作には全く関わりません。このことは押圧法の基本の基礎ですから『十分に認識してください』と再度記載します。
母指作り(母指操作)について
押圧法では各人の指型に関わらず、母指の指紋部を加圧点に密着させ、母指を固定して加圧操作に移行します。そのため、 押圧法の指作りには個人差を加味した“各人各様の習練”が必要となります。加圧精度や押圧技術の向上には“基本的条件を厳守した”各人各様の習練が不可欠となってきます。
“母指作り”の目的は、診断即治療に不可欠な加圧技術や加圧精度の向上のみならず、施術者自身の手指の変形予防や疾病予防にあります。『腫れた指を冷やしながら、泣きながら習練した』とか『手指の変形が習練の証』と語られるのは圧迫法の習練法で、徳治郎先生の手指に変形はありませんでした。教師猫は『泣きながら習練を積みなさい』と指導しますが『指の痛みに泣け』という意味ではありません。
〔ボールとビー玉〕で行なった、『テニスボール訓練』をボールを“使用せず”に完全母指対立操作の習練を行なってください。次にボールを使用せずに行なった完全母指対立操作を“手本”とし、ボールを使用したテニスボール訓練を行なってください。操作後の完全母指対立精度を確認し、それを修正しながら訓練を続けてください。テニスボール訓練法は基本の基礎です。しかし、基本は習得しても終了を意味するものではありません。押圧操作や加圧精度のレベル認識の向上に伴い、テニスボールの訓練不足を痛感させられるものです。自己嫌悪に陥り泣けてくるのが現実です。『テニスボール訓練』は上達するほど難しくなっていきます。それを教師猫は“ボール地獄”と呼んで、ニヤニヤしながら見ています。
四指作り(四指操作)について
〔手指操作〕で概説した『四指作り』の目的は“支指作り”です。“指紋部中央で指圧点に接した母指”を安定させるために支えるのが四指の役割です。『四指作り』は“支指作り”と認識し、習練してください。
重複するようですが、『四指作り訓練』の目的は“支指作り”です。この目的を常に明確に意識し習練するか否かによって、加圧精度の習得レベルは著しく異なってきます。さらに、未熟な基本に高度な技術を積み上げることは不可となってしまいます。母指操作(母指作り)はテニスボールの訓練で行ないますが四指操作の基本をテニスボールの訓練によって習得することはできません。ボールを用いた四指操作訓練は〔養成講座No.6手指操作〕の手指操作順序で使用しているサイズのボールで行なってください。
手指操作習得訓練において、四指位置を先に取り、母指指紋部を加圧面に接する手順を厳禁します。この操作手順の違いが初級レベルの押圧効果に与える影響はほとんどありません。しかし、その後の高度な技術を積み上げることが困難となってしまいます。一旦習得した『基本の基礎技術』を習得後に修正することは容易ではありません。《母指》 ・《中指》 ・《小指》・《示指》 ・《薬指》の操作順序を厳守し、習練してください。但し、中級レベルになると『逆手順の訓練』を要求され、上級者は双方を駆使します。
四指操作手順を習得したら、四指の支え部位を指紋部から指全体で接して捉える訓練に移行します。小指球で小指球支え部位を捉え支える訓練を行なってください。“四指操作で母指の安定を妨げるな”といった注意は蛇足であって欲しいものです。さらに、四指による加圧は、(母指圧の場合)厳禁です。被術者に四指圧や四指での支えを感じさせない、支え部位の形状に合わせ包み込む習練も必要です。