HOME > わが子のための指圧講座 > 10回 施術と痛み

施術と痛み

施術の痛みや不快感

施術の痛みや不快感について、数多く質問がよせられます。『苦痛効果』による肩こり解消法の『慢性的不利益』はイメージ的であれ、伝わったようです。その後「快痛なら有益か?」と言った質問が増加し対応に苦笑しています。


施術効果とは

施術効果とは、施術によって得られたよい結果であり病状の改善を意味します。 しかし、一概に『良い結果』あるいは『症状の改善』といわれても、角度を変えると評価が異なってきます。どの角度から何を効果として受け入れるかも大切です。 これらを、少し回り道になりますが、用語説明を加えながら説明していきます。


自覚症状と他覚症状

病気の状態(症状)を自覚症状と他覚症状に分類することができます。自覚症状とは、痛みや不快感のように、本人でなければわからない病気の状態(症状)を呼びます。ゆえに、自覚症状の表現や基準は個人による差が著しく、時として、医学的には曖昧なものとなります。他覚症状とは、自覚症状以外の病気の状態(症状)を呼びます。検査などの共通単位により、数値化や比較もできる病気の状態(症状)ですから、病気の悪化や改善を医学的に証明することもできます。 重複しますが、自覚症状と他覚症状は、よく混同されます。発熱の感じ(熱感)や発熱のため寒気を感じる(悪寒)は本人でなければわからない自覚症状です。
発熱は、(体温を測ることで)本人でなくてもわかりますので他覚症状となります。


伝統(経験)医学

多くの医療の源流は経験を重ねた伝統医学です。伝統医学の医療法や効果の優劣的判断は、患者の自覚症状の評価に委ねられながら継承されてきました。極端な表現をすれば、患者が痛みや不快感等から解放される。いわゆる、自覚症状が治まれば「治った」と判断されます。例えば腰痛(自覚症状)に苦しみ病院を訪れる患者は数多いのですか、痛みがなくなって「先生、腰痛が本当に治ったのか、原因が残っていないか診断してください」と病院を訪れる患者は通常ありません。自覚症状のみの判断に危険意識を持つ医師や患者は少ないようです。押圧法では腰痛原因の有無や予後の良・不良を他覚的診断で判断します。


検査技術の進歩

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1980年のレントゲン写真と2000年のヘリカルCT写真を比較してみてください。
共に頭蓋骨の写真ですが、検査技術の著しい進歩がみられます。


レントゲンとMRI画像

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以前は、椎間円板や脊髄神経等が写らないレントゲン画像と患者の自覚症状をもとに椎間円板や脊髄神経等の疾患を判断していました。現在では、画像検査技術の著しい進歩に伴い、他覚的診断が容易に可能となりました。


自覚症状への対応

手技療法の多くは伝統医学で、長い歴史の中で患者の自覚症に対応する方法を確立してきました。いわゆる肩が凝れば肩を施術し腰の病気には腰への施術を行ないます。恩師浪越徳治郎先生から「どんなに肩が凝っていても、強く押してはいけない。"ほおずきの芯"をほぐすように、丹念に凝りをほぐしなさい」という指導を受けたのは20年以上前のことです。その当時「強く押せば、患者はさらに強く押すことを求め、それは習慣性となり、悪循環を起こす」という先生の主張を医学的に証明することはできず、患者の自覚症緩和に応じる『苦痛効果施術』が主流から外れることはありませんでした。椎間板ヘルニア(MRI画像)に対して「軟骨が飛び出しているから、おし込んでやる」と強引に腰を施術する、悲鳴を上げる患者に「効くでしょう」と笑顔で答える。施術後、患者は「痛くない」とスタスタ歩いて帰路につく。こんな無知で危険な施術が評判を呼んだこともあります。

押圧法の施術で、椎間板ヘルニアの後遺症に好結果をあげていますが、それは椎間板ヘルニアを“力でおし込む”という、無知で危険な方法ではありません。
椎間板ヘルニアを“おし込んで”治したとか治ったと言う体験談を耳にしますが、椎間板をおし込むことは絶対に不可能です。それは、単なる腰痛だと考えます。

『苦痛刺激』により脳から放出される、脳内麻薬(エンドルフィン)の鎮痛作用や快楽作用は時として劇的な効果があります。しかし、近年の研究で苦痛刺激が理論的に治療と認めにくいことや、最新の映像検査機器の進歩で『苦痛刺激』による症状の悪化を他覚的に診断することが可能となり、恩師浪越徳治郎先生の主張を証明できるようになってきたことを、私個人は大変嬉しく思っています。


良薬は口に苦し

『良薬は口に苦し』という言葉の影響か、治療には『痛みが付きもの』という考えは根深く、「お子さんに苦痛を与えないで」と注意を促しても『多少の痛みが伴わないと治療効果に期待ができない』という考えも根強いようです。重複しますが、『苦痛効果』は鎮痛作用と快楽作用。あるいは専門用語で“プラシーボ効果”と呼ぶ暗示による自覚症状緩和と他覚的検査に認められる病状の悪化のみで、脳性麻痺児の運動機能向上に役立つ効果は全く認められません。


痛みや不快感の無理強い

親子で行なう押圧には、指圧や医学に対する専門知識を習得せずとも、十分な効果が期待できます。しかし、これには親子が持つ信頼関係による防衛反応の解除が不可欠です。痛みや不快感の無理強いはお子さんの防衛反応の解除を困難とします。あらゆる無理強いは、百害あって一利なしと認識してください。

わが子への指圧は、“『親子』という、ごく自然で特別な関係”が、専門家の前に大きく立ちはだかる壁さえ容易に取り除き、指圧効果の効率を高めます。







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