第2回 押圧法の必須と非必須条件
押圧法の基本
押圧法は、独自の手技です。独自の手技ですから、押圧法には押圧法独自の定義があります。さらに、独自の定義に基づいた基本があります。押圧法の定義や基本を正しく認識することは押圧法の習得には欠かせません。(押圧法の学習は、押圧法と他の手技との明確な区別から始まります)
指圧を“指で圧する手技”と解釈し、手指で圧する(上や横から重みをかける)操作を指圧と呼んだり、“圧す”と書き“おす”と呼ぶことは、指圧とあん摩の名称は区別するが、指圧の独自性を明確にしない国の指導基準(国家試験)レベルでは誤りとは言えませんが、基本的に圧する操作と押す(物に触れて上や横から力を加える)操作は全く異なります。圧する操作は、“圧迫法”と呼ばれ、あん摩の基本手技に含まれる操作法です。あん摩の“圧迫法”と指圧の“押圧法”では、根本的に似て非なるものです。
押圧法の必須と非必須
押圧法の必須条件と非必須条件に対する認識があれば他の手技との区別は容易となります。
必須と非必須条件を抜粋し説明します。(非必須条件とは、不可欠ではないが肝要な条件)
押圧法では、押圧操作が必須です。押圧とは『押す』ことです。圧することとは異なります。圧する操作は圧迫法(あん摩)の圧迫動作に区分されます。両者をその姿勢のみで判断し区別することは困難です。しかし、押圧法の習得に圧迫法との区別は有益かつ不可欠ですから、具体的に説明します。たとえば、壁を押しているか圧しているかの区別を加圧姿勢のみで判断することは困難ですが、壁が倒れた時に明白になります。押圧では壁のみが倒れ、圧迫では壁と共に加圧者自身も倒れます。
押圧法では、加圧者が自分自身を支える『自支操作』は必須条件です。
押圧法では加圧動作(加圧・持続・減圧の動作)と移動動作(圧点を移す動作)の分離も重要です。
圧方向の無変化も必須条件で“垂直圧の原則”は非必須条件となります。しかし、練習時には垂直圧が必須条件と考えてください。加圧動作と移動動作の分離は、理論的には非必須条件です。しかし、同時に行うと、圧の方向を一定に保つことが困難です。〔基本習得においては必須条件と考えて下さい〕
押圧操作は猿には困難です
手指操作は“圧排動作”と“把握動作”に大別されています。圧排動作は手を広げて行なうのが特徴で、把握動作は何かを握る動作で、対象物の形状によりその動作が変化します。 (参照:把握と圧排動作)
押圧法は把握動作が必須条件ですが、完全母指対立の獲得も非必須条件となります。押圧動作には猿には不可能な母指対立の操作が必須です。手指操作を圧排動作で行えばそれは圧することであり、あん摩の操作なのです。母指圧に「四指の支えは大切」と言われます。しかし、これは著しい誤認です。把握動作に四指の支えは、非必須ではなく必須条件です。四指の支えは大切ではなく“不可欠”です。
四指による圧排は厳禁です。把握動作と、“手首のしめ”で母指を支えるのが必須条件です。
自支を確認してください
床面に片膝(両膝)を付きます。次に、両手の母指を重ねて指紋部を床面に接します。この状態で、床面を支えにせずに圧加減(加減圧操作)が自在にできますか?自支は押圧操作の必須条件です。これを欠くと、それは、圧迫操作となり、あん摩の圧迫法と呼ばれます。押圧法の習得は手指操作の習得のみで終了するものではありません。自支操作のみならず腕力が不要となる“支点や力点を定めない操作”も重要です。そのためには、高度な抗重力機能の獲得も押圧法習得の必須条件なのです。
指型で悩んでいませんか
指型には、親指が反りやすい“甘手”と反りにくい“苦手”があります。この指型で悩む人が多い様ですが押圧法では母指の指紋部を加圧点に密着させ、母指を固定し加圧操作に移行します。そのため、指型が甘手でも苦手でも指型に関係なく押圧効果は同じです。押圧法の指作りは独自の習練が必要です。
押圧法には、あん摩の圧迫法にある“指型による『圧の特徴』や『練習法の違い』”はありません。
技の理論は技術になる
技は天賦の才を基礎とします。技術の基礎は理論です。理論は科学です。技師(わざし)は繰り返し事を行います。ここに技の理論化の可能性があります。技の理論を解明すれば、それは技術になります。
押圧法も基本手技の理論的解明により、徳治郎先生の天才的な技が技術に変わると確信しています。