バッターとゴルファー
バッターやゴルファーにとって、ボールを打つことは当然ですが大変重要なことです。それは、指圧師では押圧技術に相当します。プロに対する評価は、すべて結果により定まります。得られる評価や報酬も当然、成しえた結果に左右されます。プロはその技術や結果(評価や報酬)を維持向上するため、日々の練習を怠れません。プロにとって練習を怠ることは、技術低下のみならず、自らを引退に導きます。
バッターもゴルファーもボールを打つ技術を競います。双方ともボールを飛ばす技術は重要となります。しかし、打法は根本的に異なります。バッターは「制限された姿勢から、同一の道具(バット)を使用し、動いているボール」を打ちます。ゴルファーは「自由な姿勢から、異なる道具(ゴルフクラブ)を使用して、止まっているボール」を打ちます。両者の技術や習得法は基本の基礎から著しく異なります。基礎認識においてこれらを厳密に分別し理解することが技術習練以前の課題となります。
世界的なホームランバッターとして知られる王貞治氏は、現役時代「ゴルフの練習は?」という質問に「自ら禁じています」と答えられたと聞いています。 現役時代に同氏がゴルフの練習を自ら禁じたられた理由は、同氏が両者の基本動作を“厳密に分別し、理解”されていたためでしょう。
〔あん摩と指圧では、基本手技が基礎から異なることを、まず理論的に十分学習し、認識してください〕
臨床現場での押圧操作選択条件は、バッターよりゴルファーあるいはピッチャーよりボウラーに似ていると考えます。ゴルファーが状況にあわせてクラブを選ぶように、指圧師もその状態にあわせて操作法を選択します。ピッチャーのようにバッターに球種を見抜かれないよう、様々な投法で投げ分ける必要性はボウラーにはありません。基本に対する正しい分別が、目標の見定めや技術向上に不可欠と考えます。