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若年性更年期障害(続き)

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若年性更年期障害(続き)

若年性更年期障害(続き)  投稿者:まいたけ

教師猫の指圧Q&A(27)若年性更年期障害のまいたけさんへの回答の続きを書きます。

若年性更年期障害の本題(対応法)に入る前に、若干の回り道をします。ホメオスタシス(恒常性)機能やフィードバック機能の認識は、指圧治療に欠かせない認識ですから、読み込んでください。


それぞれ概説になりますので、質問は〔掲示板へ〕どうぞ。

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お答えします。

ホメオスタシス【homeostasis】

気温の上昇などに伴い体温が上昇すれば、汗を分泌し体温を下げ、体温が下降すれば、筋肉運動などで体温を上げる。このように生物の体内諸器官が外部環境の変化などに応じて、体内環境を一定範囲に保つ働きをホメオスタシス(恒常性)機能と呼びます。この機能を備えることで、様々な外部環境変化などに応じて、体内環境を一定範囲に保つことができ、様々な環境で生命活動を営むことができます。

哺乳類では、主に自律神経系(自律神経とホルモン)で働き、機能低下は生命維持を困難なものとし、生命活動において不可欠で、乱れてはならないものが、“ホメオスタシス(恒常性)機能”です。しかし、複雑で様々な多様性を持つ社会機構は、容赦なく心身に負荷を与え、“ホメオスタシス(恒常性)機能”を蝕んできます。これらに指圧(押圧法)が如何なる対応を取り、如何に有効であるかを概説します。

“ホメオスタシス”を担うのは自律神経系ですが、自律神経系とは「自ら律する神経系」という意味です。このことは、自律神経系が、「人の意のままにならない(不随意)神経」であることを示します。日常では、膨大な仕事を無意識に行なってくれる自律神経系の存在はありがたいものです。1日平均十万回以上動いている心臓を意識しタイミングよくコントロールするなんて・・・眠ったら最後です。しかし、このことはホメオスタシスが乱れた原因が“いかに明確であろうとも、意のままにはならない”ことをも意味します。

体内環境を一定範囲に保つホメオスタシス(恒常性)機能は、自律神経支配のため意識でコントロールすることはできません。ホメオスタシス機能を正常に働かせるためには、結果を原因に反映させ調節をはかる“フィードバック”と呼ぶ機能が重要となります。この“フィードバック”機能に乱れを生じた状態ではホメオスタシス機能は安定を失います。なお、ホメオスタシスとは、単に『恒常性』という意味の用語で、臨床の現場で、“考慮しなければならない実態”を担うのは、心身の“フィードバック”機能の乱れです。

正のフィードバック

“フィードバック”とは電気回路で出力の一部が入力側に戻り、それによって出力が増大(正)または減少(負)することを呼びます。身体も結果に含まれる情報を原因に反映させ、体内環境調節を行ないます。“ホメオスタシス”に不可欠なのが、『結果を原因に反映』させ、調節をはかる“フィードバック”機能です。この“フィードバック”機能は、『負のフィードバック』と『正のフィードバック』に大別することができます。

体温が上がりすぎた状態から身体の恒常性を保つためには、体温上昇を感知し速やかに体温を下げるシステムが作動する必要があります。このように、体温上昇という結果を、体温を下げるシステムを作動させる原因として反映させる方法を、『負のフィードバック』と呼び、結果を感知し、感知した結果を抑制する働きを担います。身体の“ホメオスタシス(恒常性)”は、『負のフィードバック』により守られています。しかし、心身でフィードバックは『負のフィードバック』のみではありません。動物の情動(人では感情)は、身体的・生理的な変化を伴い、“怒りや恐怖”が“さらなる怒りや恐怖”を招きます。このように、感知した結果が感知した結果をさらに“亢進”させるように働くのが『正のフィードバック』です。


ホルモンと神経の担う役割は同じです

ホルモンと神経について概説します。ホルモンとは、器官などから分泌され、体液と共に体内を循環し、特定の組織の機能に一定の変化を与える物質で、『化学的情報伝達物質』を呼びます。神経は、身体の中枢(各部)からの刺激を各部(中枢)に伝導する線維の束を呼びます。ホルモンは液体物質で、神経は繊維の束ですから、一見別物のようですが、担う役割は同じです。〔 参照:神経の発生と発達

神経は、構造の違いで自律神経(無髄神経)と知覚・運動神経(有髄神経)に大別することができます。通信手段に、『受取人へ郵送』、『受取人の自宅へFAX』、『受取人の携帯への電話』などがありますが、ホルモンを『受取人へ郵送』、自律神経を『自宅へFAX』、知覚神経を『携帯への電話』にたとえることができます。何れも情報伝達手段ですが、それぞれ特徴があり、身体は実に効率良く使い分けています。

本文の説明で、「ホルモン分泌異常」と「自律神経の異常」とは、異なる意味ではなく、共に情報伝達の異常と理解してください。さらに、ホルモン分泌のコントロールは自律神経系が支配しています。

混乱は避けたいのですが、神経細胞も一種のホルモン器官です。神経細胞には、ホルモンを放出する機能と受け取る機能があります。神経細胞から伸びる長い繊維を神経線維(神経突起)と呼びます。


自律神経の乱れ

『若年性更年期障害』の熱感や発汗などの様々な不定愁訴は、『更年期障害』と同様に卵巣のホルモン減少に伴う、“自律神経の乱れ”によって生じます。少し復習を行ないますが、『若年性更年期障害』での卵巣のホルモン(卵胞ホルモン)の減少は、脳から分泌される卵胞刺激ホルモン(性腺刺激ホルモン)の減少が原因で、卵胞刺激ホルモン(性腺刺激ホルモン)減少原因は性腺刺激ホルモン放出ホルモンが関わります。さらに、卵胞刺激ホルモン(性腺刺激ホルモン)や性腺刺激ホルモン放出ホルモンなどの減少には、心身の負荷に対する強烈な“生命”の命令が影響します。これらは、『自律神経失調症』と総称する自律神経の異常として出現し、ホメオスタシスが乱れます。自律神経異常は原因が明確でも、患者自身の意思では制御不能です。結果として卵巣は働かず、廃用性の萎縮を生じます。卵巣が萎縮した後に、卵胞刺激ホルモン(性腺刺激ホルモン)の分泌が改善されれば『更年期障害』が出現します。
現代社会が生みだす様々な“心身へ負荷”は、容赦なく現代女性を無差別に襲います。“怒りや恐怖”の情動(感情)は、身体的・生理的な変化を伴い、自律神経を乱し、爆発するまで、留まることを知らない『正のフィードバック』さえ起こします。単なる生理不順か、“生命”の命令か、専門医へ受診を勧めます。

自律神経は「意のままにならない(不随意)神経」ですが、全身に分布し、その働きにより、『交感神経』と『副交感神経』に分けられます。両者は、それぞれの器官に対し、相反する働き(拮抗作用)を担います。


情動(感情)と理性

自律神経失調症の発症と理性の関わりについて、概説します。先に、 【自律神経】を参照してください。

怒りや恐怖などのように、身体的、生理的変化を伴う比較的急速にひき起された一時的で急激な感情の動きを“情動”と呼びます。“情動”は『正のフィードバック』を起し、瞬時に交感神経が優位となります。

昼食直前に、上司に呼ばれ、上司の責任を転嫁され、激しく叱咤されたと仮定します。自律神経は、怒りや恐怖の“情動”で瞬時に交感神経が優位となります。怒りや恐怖の“情動”に従って攻撃や逃走などの行動をとれば自律神経に乱れは生じません。しかし、現代社会において“情動”に従った行動は“理性”によって阻止されます。上司と“理性”の束縛から解放された“情動”は『正のフィードバック』を起し交感神経をより優位に高めます。食事の準備(副交感神経優位)ができていない胃袋に「時間だから」と容赦なく食事が詰め込まれます。野生の動物が“情動”を“理性”で抑えることはありえません。さらに、怒りや恐怖から解放された後に、それらが『正のフィードバック』を起すこともありません。ましてや、交感神経が優位となった状態で「時間だから」と食事をすることなど不可能です。“情動”で交感神経が優位となった状態で食事をする。さらに、“情動”が『正のフィードバック』を起している時に「頭にきた・ヤケ食いだ~」と大食いをする。自律神経は混乱するのが当然で、失調しない方が不自然ではないでしょうか。


情動(感情)のコントロール

自律神経を乱さないためには、“情動”の『正のフィードバック』を避けることです。【平常心】を参照して、“脈取り法”を習得てください。

自律神経は、意識では制御できない(不随意の)神経です。しかし、交感神経は著しく“情動”の影響を受けます。ここまでは他の哺乳類も類似していますが、現生人類では理性が関わり、“言動を制限”するために、去ってしまった事象に対しても“情動”が『正のフィードバック』を続け、交感神経優位の状態が継続し、心身共に『過緊張状態』に陥りやすくなります。現代社会の複雑さは、より拍車をかけます。

臨床現場においては、心身が『過緊張状態』に陥った原因が明白で、既に原因は解決した状態でも、“情動”の『正のフィードバック』抑制に対し、患者自身のホメオスタシス機能は効率よく作動しません。
その理由は、自律神経の不随意性のみでなく、自律神経の乱れ(自律神経失調症)が多くの不定愁訴を引き起こし、この苦痛や不安等が、新たな“情動”の『正のフィードバック』として悪循環するからです。

自律神経は不随意性神経ですが、『交感神経』と『副交感神経』に分けられ、相反する働き(拮抗作用)を担います。【脈取り法(平常心)】で手法の説明を行いましたが、『副交感神経』に対する物理的刺激は『交感神経』の抑制に働きます。説明が前後しますが、自律神経系の乱れ(自律神経失調症)の改善を『揺れる振り子』を止める手段に例えれば、自身の“ホメオスタシス(恒常性)機能”で改善を行うのは、揺れる振り子が自然に止まるのを静かに待ち続ける手段のように思えます。薬物投与やカウンセリングは、揺れる振り子に力を加えて静止させる手段のようです。薬物やカウンセリングが適正であればよいのですが、副作用で生じた“不快な症状”や合理的な理論に“理性が押さえ込まれた”ことに、“情動”が『正のフィードバック』を起こすことも稀ではないようです。押圧法では、振り子の支点を振り子の揺れる方向に移動させるような手段をとります。『交感神経』には触らず、『副交感神経』に対する物理的刺激で間接的に効率よく『交感神経』の抑制を行い、後は自身の“ホメオスタシス(恒常性)機能”に任せます。



眼球急速運動【REM】

教師猫が教師猫の治療室で、『交感神経』の抑制手段の基本として選択する手法は“腹部指圧”です。「また~。腹部指圧ですか」という声が聞こえそうですが・・・。“腹部指圧効果”の一例を述べます。

教師猫の治療現場で、しばしば観察されるのが腹部指圧中の『眼球急速運動』です。これは、治療中の患者さんが寝てしまった報告ではありません。教師猫の治療時間は平均20分程度で、体位の変換はその間に何度も行ないます。わずか数分の腹部指圧で生じる、眼球急速運動(RapidEyeMovement)を20数年前に初めて観察したときには如何様に捉えればよいのか困惑しました。骨格筋は弛緩状態を示します。声をかければ応答はあり、その状態は『レム睡眠』を想定させました。

その後も腹部指圧中の『眼球急速運動』は頻繁に体験しましたが、全く謎は解けませんでした。数年前、大きなチャンスが巡ってきました。腹部指圧中に“目を半分”開いた状態で『眼球急速運動』を起す患者(中学女子)に遭遇し、本人と保護者の快諾を得て、一部始終をビデオ撮影することができました。

快諾は得たものの、中学女子が目を半分開けて眠る姿をUPで撮影しなければ目的を達しないのです。撮影前に表情のUPを撮影することを十分に説明し、事前の完全覚醒を明確にするために施術前から撮影を始めました。施術体位の変換に対応するため母親に手持ちでの撮影を依頼しました。数分間の腹部指圧で『眼球急速運動』が出現することを記録するため、「目を閉じることを限界まで耐える」という条件も付加しなければなりませんでした。中学女子には、かなりの精神的緊張を伴う条件を課した状態での施術となりましたが、ノーカット(19分34秒)で『レム睡眠』を想定させる『眼球急速運動』を含む、施術の一部始終をビデオ撮影することができました。覚醒も良好でした。(二度目は16分38秒)

後日、数人の小児科医や大学教授(生理学)にビデオテープを送り、検証をお願いしました。
ご返事頂いた内容を要約し、以下に列記します。

 ・部分映像であれば、眼球の動きや表情からレム睡眠時の『眼球急速運動』と判断する。
 ・脳波や筋電計での測定結果がないので“レム睡眠”と断定することはできない
 ・入眠時間が短い(ノンレム睡眠が観察できない)だけで“レム睡眠”を否定することもできない。
 ・施術前後の様子からは疾患を疑わせる様子はない。
 ・深いリラックス効果を認めるが、指圧効果とは断定できない。
 ・脳波や筋電計による測定を実際に立ち会って行ないたい。

今日までに、腹部指圧中の『眼球急速運動』は数多く観察していますが、脳波や筋電計での測定実験を行なったことはありません。これらの医学的根拠がない状態で、『眼球急速運動』を“レム睡眠”と認めていただくことは困難でしょう。いつか、チャンスがあれば試みたいと考えています。指圧効果とは認めていただけませんでしたが、深いリラックス効果を否定されなかったことを教師猫は大変喜んでいます。


早期発見と早期治療

教師猫は、若年性更年期障害の発生原因の1つに、前述した現生人類の『雌』に対する強烈な“生命”の命令が関わっていると考えています。意識では制御できない 自律神経失調症や、それらの元凶ともなる“情動”の『正のフィードバック』に臨床現場での腹部指圧は深いリラックス効果を与えています。

患者の愁訴(自覚症状)に頼らず、他覚的診断法や押圧法の真髄である『診断即治療』を駆使すれば、心身の過緊張を早期に発見することは可能です。若年性更年期障害は、自律神経の乱れを起因とし、自律神経の乱れは、“心身への負荷”への身体ホメオスタシス(恒常性)機能の不適応によるものです。 複雑な現代社会が与える“心身への負荷の回避”は困難であっても、“心身への負荷”が身体に与えた悪影響の改善は、押圧法による施術で可能となります。若年性更年期障害の改善は、不定愁訴が引き起こす“情動”の『正のフィードバック』を抑制しうる、『副交感神経』に対する施術が最も有効と考えます。



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