患者への対応-3
時として、患者対応のわずかな不手際から、長年積み上げてきた患者さんの信頼が、一瞬にして崩壊してしまうことさえあります。そして多くは、そのことは告げられず、気付かせられることも少ないのです。
後日、その人が笑顔で対応してくれても、もはやあなたの患者ではありません。笑顔で去った患者から信頼回復のチャンスを与えられることは、きわめて希なことです。
ここでは臨床家の立場から、そのいくつかを概説いたします。
- 1・患者の良き理解者になることは大切です。でも、患者を理解したような言動は厳禁です。患者は理解より結果を求めます。患者を理解する努力を続ける者であることを示すことが重要です。
- 2・他の患者を話題にするのは世間話でも厳禁です。(明確な善意の質問にも難色を示すこと)
- 3・患者に同意を強く求められたとき、内容に関わらず、安易な同意は厳禁です。(言動とは裏腹に否定を望むケースも少なくない)質問返しの習慣を持つことです。
- 4・患者に対する、医学的見識と個人的意見とを明確に区別する。(矛盾可) 患者に意見を譲歩した場合は、個人的意見とし、その旨を明確に伝えることです。
- 5・患者への対応は平均値ではなく、個人値で行う。その旨も明確に伝えることが必要です。
- 6・患者の愁訴に同意を示すとき、必ず、他覚的診断により同意する習慣をつけることです。 特に、自覚症状による不定愁訴を他覚的診断なしに安易に認めてはいけません。
- 7・患者は、“患い人”です。心も病んでいます。(人格評価は治癒後に行うことです)
- 8・人との対応に、真の科学性(再現性)などはあり得ません。(必要なのは思いやりです)
患者の対応で、特に注意すべきは失言でしょう。しかし、失言か否かは相手に委ねられた部分も大きく、人の人間らしさでもあり、完全防止は極めて困難です。
失言には弁解や謝罪等より“言葉の消しゴム”が有効でしょう。 しかし、応酬話法に頼るより、患者との揺るぎない信頼関係を築く努力が必要です。
『さらなる具体例については、質問を下さい。講義で具体的にお答えします』