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第26回 押圧法概論(9)

様々な疾患の要素や原因として着目される“血液循環不良”ですが、ややもすると『改善が重要』という“用語”のみが本来の意味を持たされず、飛び交っているように思えます。“教師猫は異なことを言う”と思われますか。“血液循環不良”を正しく認識すれば、入浴や施術前後のサーモグラフィー画像を比較し「血液循環の改善」と喜こぶことや必要以上の“サラサラ血液”をありがたがることもなくなるでしょう。

血液循環不良

血液循環不良とは、身体の一部または全体への血液の“流入流出バランス”がとれていない状態です。医学的には、局所の貧血・充血・うっ血などと表現します。これら、局所の貧血・充血・うっ血などを改善することが血液循環の改善であり、血管を拡張したり心拍数や血圧を上げることではありません。

【閉鎖血管系の物質代謝順路】
〔酸素と糖(O2・C )の順路〕
呼吸器や消化器で取り込まれた酸素や糖は心臓で加圧された血流により動脈を経て毛細血管に至る。毛細血管の穴などから血管外に染み出す組織液により、細胞周囲へと送られ、細胞内に染み込む。

〔二酸化炭素(CO2 )の順路〕
細胞の生命活動の結果生じた二酸化炭素は、細胞内より染み出し、組織液の流れに乗り、毛細血管の穴などから血管内に染み込み、静脈の流れに従い心臓へ送られ、呼吸器により対外へ排出される。

平均直径が百分の四ミリメートルの細動脈と百分の一ミリメートルの毛細血管で、10万kmにおよぶ血管総延長の殆どを占めています。物質交換のための毛細血管の穴は十万分の一ミリメートル程度です。

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教師猫は、何故にここまでこだわるのか

“指圧を業としている”有資格者であれば、専門学校で三年間かけ、合計2,208時間(必修30科目)以上にもおよぶ医学知識や技術を学び、国家試験に合格して免許を得ています。血液循環(物質代謝順路)についても、当然学び認識されている事項です。しかし、これらはいつしか、必要とされる多くの知識や技術の下積みとなり、考慮されることなく、忘れ去られてしまった知識のように思えます。自動車学校で信号について学びます。その際「青色の灯火の信号は直進し、左折し、右折することができます。進めという意味ではなく歩行者や他の車などの状況が良ければ進んでも良いという意味です」と教わりますが十年以上無事故無違反のベテラン運転手といえど何%の人が『信号』について、“一文字一句誤りなく”暗唱できるでしょうか。十分な注意力と優れた運転技術があれば、信号についての(日常的に必要な)知識は『青は進め・黄色は注意・赤は止まれ』でさしたる支障は生じないと考えます。しかし、血液循環や血液循環不良のメカニズム、さらに細動脈や毛細血管などの“ミクロサイズの解剖学”や“物理学”は全ての理学療法、特に物理療法では下積みにしてはいけない知識です。当然、押圧法に不可欠です。

指圧(押圧法)の創始者で教師猫の師匠である、浪越徳治郎先生は『痛い指圧に、効果はない』と常々力説されていました。しかし、当時は現在のような、“高性能の精密検査器機”は存在しませんでした。『鬼灯(ほおずき)の芯をほぐすように』と指導され、肘や膝などの鋭利な部位を用いることや強圧を戒められました。しかし、数百年におよぶ手技療法の“自覚症”緩和の経験(歴史)は、徳治郎先生の主張を“陰で否定”し継承されていきました。このことが“指圧は痛いほど効く”という誤認識を与えた原因です。
指圧は痛いほど効くのですか〕で概説しましたが、身体に苦痛刺激が加わると、身体は苦痛刺激から身を守るために様々な防衛反応を起こします。特に『ベーター・エンドルフィン』の作用には劇的な鎮痛効果があります。患者さんの「最初は痛かったけど、後はスッキリ気持ちがよくなりました」という体験は苦痛刺激に対して脳内麻薬である『エンドルフィン』が患者さんの脳から放出されたためです。脳内麻薬(エンドルフィンなど)の発見は1970年代で、その作用に専門家から異論が出なくなったのは近年です。

数十年前に、某テレビ局に出演中の美容研究家から『最近流行の指圧、あれは全身打撲』との発言があり、物議をかもしました。『国が認めた技術を“全身打撲”とは何事か、暴言にも程がある謝罪せよ』と抗議し、某テレビ局では、発言を撤回し、一度の失言に対し二度にわたる異例の謝罪を行ないました。しかし、最新のMRI画像は、苦痛刺激による「最初は痛かった、後は気持ちがよくなった」という自覚的な症状改善を“他覚的に否定”しています。そこに観察される物は、骨格筋の炎症と限度を超えた刺激によって破壊された、骨格筋の不完全再生による“肉芽組織”の増加です。限度を超えた刺激に対する、某美容研究家の先生のご意見は正しかったのです。故人となられた某先生に教師猫はお詫びします。

最新の医療検査器機が次々に、様々な疾患原因や治療結果の是非を“他覚的”に証明していきます。いかに、患者の満足や“自覚的”症状改善結果が得られても、これらに同意してはならない。疾病治療専門の治療家である以上、常に他覚的治療効果を求め確認しなければならないと教師猫は考えます。腰椎椎間板ヘルニアの治療にあたり、『“ヘルニア”とは飛び出したという意味です。飛び出した軟骨を指圧で押し込みます』と説明し、『これをどうやって押し込むの?』と患者さんからMRI画像を提出されて問われたら、どのように対応しますか。“肩こり”に対する施術結果をMRI画像で確認するよう患者さんに奨められますか。教師猫が血液循環の物理的知識やミクロの医学にもこだわる理由がここにあります。








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