乳腺炎の臨床
乳腺炎は授乳期に多い、乳腺の細菌性感染による急性炎症です。乳腺炎では発症以前に乳管の開通不十分による乳汁うっ滞が多く観察されます。乳管に導かれて乳管洞に貯留された乳汁は乳房や乳房周辺の体温により水分が奪われやすく、乳管洞の構造上、乳管洞内で固形化した乳汁は乳口を塞ぐ栓の役割をはたします。細菌性感染がなく乳腺炎に至らずとも、乳管の開通不十分により、乳汁の分泌やうっ滞による乳房内圧の上昇が生じます。乳房内圧の上昇は耐え難い疼痛を生じます。
秘伝の手技
時には「お産よりつらい」と表現される乳腺炎の主因とは“にゅうせん(乳栓)”による乳管の不通です。“にゅうせん(乳栓)”による乳管の不通の原因は乳管洞の構造にあります。(乳腺の模型図参照)乳房や乳腺の解剖学的理解があれば、手技により乳管の再通(開通)を行い。乳管開通後は哺乳や搾乳の指導により乳腺炎の予防は患者自身でも行なえるほど容易になります。
長期にわたり秘伝の手技とされていた、患者に苦痛を与えない『乳管再通術』を公開します。
乳輪部押圧操作
視診と触診により、開通乳口と未開通乳口を判断します。乳汁うっ滞により腫脹や疼痛が激しい場合は開通乳口より搾乳し、乳房全体の内圧を下げます。この際、乳房全体を押圧すると患者の苦痛は耐えがたいものとなります。時として患者自身の呼吸による振動さえ激痛を生じます。乳房全体を揺れ動かないように支え、乳輪部(乳管洞)および乳頭への施術のみで搾乳を行ないます。
二指乳輪部水平操作
右母指および右示指の二指操作で乳輪部と乳輪外周部を水平方向に押圧。右中指・右薬指・右小指の三指は右母指および右示指の二指を支えながら左手指と共に必要に応じて乳房各部位を押圧します。この操作では開通乳口より開通乳管内に貯留している乳汁の排出を行ないます。乳汁排出により乳房内圧が減少し疼痛が緩和されます。この操作を『二指開通部搾乳操作』と呼びます。乳汁うっ滞による腫脹が激しいほど『二指開通部搾乳操作』は有効な操作ですが、施術前に乳口の開口部と未開口部の判断が重要となります。未開通乳口・未開通乳管洞・未開通乳管および未開通乳腺を判別します。
これらへの施術は厳禁です。視診や触診さらに施術中の問診により容易に対応することができます。
〔熟達すれば診断側治療で問診不要ともなりますが、最初は問診を重視して下さい〕
二指乳輪部垂直操作
二指乳輪部垂直操作は二指乳輪部水平操作の二指操作を垂直方向に操作し押圧する方法です。
『二指開通部搾乳操作』による乳房内圧の減少と疼痛緩和以後の操作になります。乳管洞に存在する“にゅうせん(乳栓)”を除去し乳管不通を改善するための準備操作ですが、本操作と『二指開通部搾乳操作』によって乳管再通が生じることも稀ではありません。本操作は未開通乳管洞への直接操作となり施術痛を生じやすいのですが、乳房内圧への考慮で、施術痛を容易に回避することができます。
乳輪部押圧操作拡大写真
乳輪部押圧操作を拡大掲載します。(連続動作ではありませんが、写真をクリックすると写真用窓が開き続き写真のように切り替えて見ることが出来ます。 )
押圧法は移動と加圧を分離する独自の操作であることを十分に認識し参照して下さい。
乳頭部押圧操作
乳頭部押圧操作
左右の母指および示指の二指操作により乳頭部を水平方向に押圧します。『二指開通部搾乳操作』と『二指乳輪部垂直操作』の繰り返し施術で未開通の乳口に乳汁や “にゅうせん(乳栓)”を観察することができるようになってきます。左右の中指・薬指・小指の三指で未開通乳腺を触診しながら必要に応じ各部位を押圧します。両手掌圧の乳房加圧操作も交えながら未開通部乳口に “にゅうせん(乳栓)”の排出を促します。“にゅうせん(乳栓)”が排出されれば乳管は再通(開通)し、治療は無事終了です。
乳頭部押圧操作拡大写真
乳頭部押圧操作を掲載します。連続写真ではありません。
押圧法は移動と加圧を分離する独自の操作であることを十分に認識し参照して下さい。
乳房加圧操作
両手掌圧による乳房加圧操作を掲載します。上記の各種操作に交え行ないますが、安易な加圧は乳房内圧過剰による不要な施術痛を与えます。十分な考慮と技術が必要となります。乳房には筋性防衛は存在しません。視診や触診さらに問診により対応してください。患者さんの笑顔まで、もう少しです。
備 考
哺乳中と哺乳終了後の写真(同一人物)です。
写真にカーソルを重ねてください。哺乳中の乳房写真がと哺乳終了後の写真に変わります。
通常と哺乳中の乳房変化を観察することができます。参照資料として掲載します。
乳腺炎患者の乳房写真です。
乳腺炎患者の乳房写真ですが施術後15時間ほど経過しているため、症状は改善されています。
写真にカーソルを重ねると炎症部位を観察することができます。参照資料として掲載します。