HOME > 咲晩臨床資料 > 17.帯状疱疹

帯状疱疹

帯状疱疹は幼児期に罹患した水痘症(みずぼうそう)ウイルスによって発症します。水痘症の治癒後も水痘症ウイルスは神経節に潜伏し、疲労や風邪、加齢などにより抵抗力の低下時に、再活動を始め、神経を伝わり皮膚に出現します。発痛から治癒まで3~4週間ですが帯状疱疹後神経痛などの後遺症となることがあります。 〔帯状疱疹に対し指圧は禁忌です〕


帯状疱疹に指圧?

指圧による臨床例を紹介する〔咲晩臨床資料保管庫〕に、指圧の禁忌症である帯状疱疹臨床例の掲載は違和感を覚えられる方も少なくないと考えます。当然ですが、骨折や捻挫同様に帯状疱疹の患部を直接的に指圧(施術)することはありません。“骨折や捻挫同様”という発言に、頭の中に『?』マークが点灯した読者も少なくないかもしれません。教師猫が“口を滑らせた”わけではありません。臨床現場の教師猫の治療室では、〔伝説の骨折治癒〕でも紹介しましたが、医師による適切な処置が施された後の骨折や捻挫に対し、疼痛緩和や治癒促進の目的で指圧を施します。もちろん、患部に直接施することは一切ありませんので誤解がないようにしてください。 〔くれぐれも、患部への直接施術は禁忌です〕


〔伝説の骨折治癒より抜粋〕
椎骨や大腿骨の骨折は→寝たきり→認知症(痴呆)のコースを歩みやすいものです。高齢な両先生の伝説的骨折治癒例は指圧の有効性のみならず、適切な早期対応法を示唆するものだと考えています。


帯状疱疹症例

帯状疱疹症例写真を掲載します。本患者の場合、来院時に“帯状疱疹”は診られず椎間板ヘルニアを疑わせる激しい腰痛が愁訴でした。本患者さんは内因及び外因的にも長年の慢性腰痛の持ち主です。他覚的診断(主に触診)において椎間板ヘルニアの症状が全く認められず、愁訴の改善は認められたものの原因不明の状態で、様々な疾患が頭をよぎる(釈然としない)状態で経過観察をお願いしました。疱疹が一週間後に出現し、『帯状疱疹』による発痛と確定でき、治療家としては胸をなでおろしました。

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ディフェンスとディファンス

『肋骨が折れているのに、指圧をして大丈夫なの』という家族や友人の心配を尻目に教師猫の治療室に通う患者さんは少なくありません。そんな患者さんの共通の願いは、“とにかく楽になりたい”のです。重複しますが、押圧法では帯状疱疹にかぎらず、医師による適切な処置が施された後の骨折などにも疼痛緩和や治癒促進の目的で対応します。もちろん、骨折患部に直接施術することは一切ありません。くれぐれも誤解がないように、十二分に注意してください。対応法と諸注意について概説します。

帯状疱疹や骨折のように苦痛を伴う疾患には、苦痛に伴う激しい“マッスル・ディフェンス”が生じます。この“マッスル・ディフェンス”は局所(患部)の血流を妨げ、新陳代謝を下げ、自己再生力を低下させるとともに発痛原因の一つともなります。(マッスル・ディフェンスとマッスル・ディファンスの混同に注意)

〔備考〕
マッスル・ディフェンス(muscle・defense)は“筋性防衛”と表現され、西洋医学専門用語では疾患を原因とした刺激が内臓から体壁に反射し、骨格筋が収縮を起こし身体を防衛する反応を主に呼んでいます。しかし、骨格筋が防衛反応を起こす現象は、西洋医学的表現の“マッスル・ディフェンス”のみではなく、外部からの刺激や心因性の刺激によっても生じます。押圧法による疾病治療において、これらの区別は不可欠となります。そこで、筋性防衛の原因が外部刺激に由来するものをマッスル・ディファンスと呼び心因性刺激に由来するものをメンタル・ディファンスと呼んで区別することにしています。

以下重複しますがそれぞれを概説します。

〔マッスル・ディフェンス〕
マッスル・ディフェンスとは、“筋性防衛”と呼ばれる医学用語で内臓体壁反射や疾患に伴う痛みなどで骨格筋が反射的に収縮を起こし、身体を防衛する反応です。押圧法においても疾患を原因として生じる筋性防衛反応は医学用語に準じ“マッスル・ディフェンス”と表現します。

〔マッスル・ディファンス〕
マッスル・ディファンスとは、押圧法の専門用語と理解して下さい。身体は疾患のみならず、外部からの刺激に対しても反射的に骨格筋を収縮させ防衛反応を行ないます。押圧法では圧刺激により骨格筋が反射的に収縮し防衛を起こす反応を他の筋性防衛反応と区別し、“マッスル・ディファンス”と呼びます。押圧法の臨床現場において、“ディファンス”と呼ばれるものは“マッスル・ディファンス”を現します。

〔メンタル・ディファンス〕
メンタル・ディファンスとは、反射的に骨格筋による防衛反応を行なう原因が心因性のものを呼びます。



臨床現場において〔マッスル・ディフェンス〕・〔マッスル・ディファンス〕・〔メンタル・ディファンス〕の認識や区別は不可欠です。これらの不認識や混同は診断や施術法選択に影響を与え、〔ディファンスの危険〕でも述べましたが、治療効率の低下を招くばかりではなく、疾病悪化を促すことも稀ではありません。


施術の有効性

帯状疱疹に限らず、臨床現場においては、医師による適切な処置が施された後の骨折や捻挫に対し、疼痛緩和や治癒促進の目的で指圧を施すことは述べましたが、施術の有効性について概説します。

疾病を治癒する(病を治す)ものは、治療行為ではなく生命体が持つ自然治癒能力(自己再生力)です。疾患部位を守るために生じる〔マッスル・ディフェンス〕は疾患部位の骨格筋を収縮させ疾患部位に運動制限を与え疾患部位を過度な運動や外的刺激から守るためには有効なのですが、このことが疾患部位の血液循環不良や廃用性萎縮を促し、自然治癒能力(自己再生力)低下を招きます。

〔マッスル・ディフェンス〕による二次的疾患とも言える、“血液循環不良や廃用性萎縮”は一週間単位で正のフィードバックとなり、二次的疾患による悪循環を引き起こし、後遺症の発症原因を生み出します。

押圧法による、〔マッスル・ディフェンス〕を生じた疾患部位骨格筋の“機能協力骨格筋”への押圧刺激は疾患部位骨格筋の〔マッスル・ディフェンス〕を緩和させます。疾患部位の疼痛緩和を始め、疾患部位の血液循環不良を改善し、二次的疾患の最大原因である廃用性萎縮を予防します。さらに自然治癒能力(自己再生力)を向上させ疾患の治癒を早めます。


詳細は講義で説明しますが、指圧禁忌症患者への“全ての施術”が禁じられているのではありません。医師の同意を得たり、医師による適切な処置が施された後は患部への直接施術や全身性禁忌症患者を除けば、押圧法による施術は可能で有効です。但し、押圧法技術習得不足による対応は論外です。

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