患者への対応-1
患者は様々な話題や質問をします。その一瞬一瞬の受け答えこそ、治療の一環として重要です。もしも対応を誤れば、患者は『あなたへの絶望』をお礼の言葉と笑顔に隠して去っていきます。鋭敏で繊細、かつ鈍感で身勝手な『さまよえる、患い人の心』への対応には、その心得が必要となります。
来院患者の多くは、自分の疾患に対し意識または無意識に、一種の罪悪感や劣等感を持っています。さらに、他者からの非難や嘲笑に対する、恐怖心や警戒心をも持っています。(治療家にも同様です)
初診患者の心理はさらに複雑です。口をつく言葉とは裏腹です。治療に対する期待より不安が大きく、受診のための来院でさえ、自分自身の意志ではない場合も珍しくはありません。
初診患者を、全面的に受け入れ、理解したような態度は、無意識に拒絶されます。初診患者は、無意識に自身の心理(警戒心や不安等)を治療者に投影し、それが治療家から発されているような、無意識的誤解に落ち入ってしまうことも少なくないのです。患者の無意識的拒絶や無意識的誤解は、意識的に『合理化的適応』へと姿を変えて、治療家評価の中核となってしまいます。
【対応法】
「仮定話法」も有効です。「もし私が、あなたならば……」と切り出します。『取り去れない』疾病や施術に対する不安に不満感を共有することも大切です。
「母心の対応」も有効です。患者の母親が自分と同じ知識や技術を持つならば、どう対応するか、自問自答してください。さらにその旨を患者に伝えることも忘れずに。
最も重要な対応は、患者は物ではありません。『人として遇すること』です。患者は、患い人です。
初診患者の心が、疑心暗鬼であればあるほど、適切な対応によって、信頼は確実に得られるものです。さらに、その信頼は絶大なものへと育っていきます。
動機はどうであれ、縁あって『あなたを頼った』患者です。好きになって下さい。
『初診患者の心は「パンドラの箱」のようなもの。希望を引き出して下さい』