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情動と理性脳(5)

摩擦の解消

自律神経失調は、個人の身体的素因や気候変化など、様々な原因で生じます。ここでは、人が“人である”がゆえに発症原因となる、『動物脳と理性脳の摩擦』による、自律神経の失調をテーマとしていることを再確認してください。

自律神経の失調は、動物脳(情動)の働きにより優位となった交感神経によって生じる言動を、理性脳(情操)が抑制し、交感神経の働きで作り出された、『情動エネルギー』が残留し、『正のフィードバック』を起し、身体が環境変化などの影響から恒常性を守るために必要なホメオスタシス機能維持に不可欠な、自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスが乱れることが原因となって生じます。
〔文章を熟読するより、図に書いて、因果関係を理解してください〕

動物脳と理性脳の間に“感情的摩擦”が生じなければ、自律神経失調の起因が消失し、自律神経失調症の発症には至りません。既に発症している患者を除けば、全てが改善されます。動物脳と理性脳の間に“感情的摩擦”を生じさせない手段は、いずれかが、いずれかの感情に言動を“完全”に従わせることです。

しかし、本能的欲望を持つ動物脳(情動)の感情に従えば、“人が人として”集団の中で生きることは不可能と考えます。さりとて、『ニーチェの言葉』で表現される現代社会において、常人が動物脳(情動)を理性脳(情操)で『情動エネルギー』を生じさせないまでに、完全に従わせることは“容易なことではない”と考えます。
一般的に用いられる改善手段について、〔これで解決・・・?〕で概説しましたが、いずれも、それなりの論拠と改善は認められるものの、医学的再現性を満たすほどの結果を期待することは、自律神経失調症の性質上無理があるようです。

進化の意外なしくみ

生物は“生き残り進化”に伴って、様々な機能を獲得してきました。生存をかけた巧妙な機能が実に“単純なシステム”で行なわれていることも少なくありません。

アゲハチョウの幼虫がサナギに変わるとき、体の色を周囲の色に合わせ保護色にします。幼虫は周囲の色を基準に、自身の色を決めて保護色としているように思えます。しかし、このときの色を決める基準は“色ではなく触覚”です。サナギになる場所がツルツルしていれば緑色、ザラザラしていれば薄茶色にします。

『投げ縄グモ』という珍種のクモがいますが、このクモは網を張らずに、糸の先に大きな粘球を作ります。夜間に、この球を投げ縄のように振り回して、近づいた『ガ』にぶつけて捕まえます。夜間に『ガ』を見つけ、粘球をぶつけるのは大変な能力と思ったのですが、意外と単純なシステムでした。『投げ縄グモ』は粘球から雌の蛾の『フェロモン』と同じ匂いを出すのです。雄はこの匂いに引きつけられ、羽の音で『ガ』の接近を感じた『投げ縄グモ』は、反射的に粘球を振り回します。

人工の薄茶色のツルツルの“ビニールの林”で、緑色になるサナギやバイオリンの音色を羽音と間違えて懸命に粘球を振り回す投げ縄グモはこっけいですが、自然界においては、低コストで実に効率の良い機能だと考えます。〔少々脱線〕

動物脳(情動)を制御する

自律神経の失調によるホメオスタシス機能低下と動物脳(情動)との因果関係や動物脳と理性脳の摩擦について解明し、得られた自律神経失調の“改善策”は、動物脳(情動)の抑制ではなく“動物脳(情動)の制御”にあります。

しかし、前述しましたように、前述手段や理性脳(情操)による制御は、それなりの論拠と改善は認められるものの、医学的な再現性を満たすほどの結果を期待することは、自律神経失調症の性質上、無理があるようです。動物脳(情動)を制御する手段は動物脳(情動)に直接関わる手段でなければならないようです。

動物脳(情動)に直接関わる手段としては、理性脳(情操)の影響を受けにくく、直接的に動物脳(情動)を刺激する、五感(視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚)刺激が有効と考えます。これらの刺激は理性脳(情操)を介さず、直接動物脳(情動)を刺激します。いい音楽が、理屈ぬきで人を心地良くさせる理由がここにあります。
理性脳(情操)を介さない嗅覚刺激を利用して、人の心を癒す『アロマ・セラピー(芳香療法)』などの“五感療法”が自律神経失調症の改善に着目される理由も一応、理論的には納得できるのですが、臨床的には、五感刺激の内容に対する“快の個人差”への対応の難易度やマニュアル化された手段で治療法としての再現性の確率、逆効果(不快に感じた場合)への対応に疑問が残ります。

押圧法による対応

押圧法には、動物脳(情動)に直接関わる手段というより、動物脳(情動)の働きにより優位となった交感神経の異常緊張を解消する手段があります。腹部指圧を中心(上級者は頚部)とした、副交感神経刺激が効果的です。ワンマンで誰の意見も取り入れない人が、実に素直に孫の意見に従うように、“あっけない”ほど短時間に動物脳(情動)や交感神経の異常緊張が静まります。





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