第23回 押圧法概論(6)
指圧の“○○効果”
『指圧は、解剖学的に体系づけられ、疾病の予防と治療を目的とし、手指のみによって押圧することで、○○の向上や△△効果が得られます』と語られます。この“○○や△△”には、自然治癒力や免疫力の向上。あるいは、血行改善による酸素不足や老廃物の蓄積を解消などの様々な用語が挿入されます。無論、指圧効果を否定するわけではありません。しかし、『そんな理論や加圧では、○○の向上や△△効果は得られないのでは』とか『論に矛盾した加圧法では』と教師猫が感じることも少なくはありません。
指圧に限らず、多くの療法(病院での現代医療を含む)が伝統医療を基礎としてきました。数多くの臨床実績(時に手探りで論拠のない物含む)が経験として積み上げられ、有効とされた結果の統計から導き出された理論をさらなる基礎として積み上げてきました。結果の正当化が目的の〔仮言的三段論法〕や他覚的検査法や確定診断が確立されていない疾患に対し、自覚症状を合理化的に誘導する目的で、手当たり次第に無秩序に並べたとか、基礎医学に無知なるが故の意見と感じられる様な理論さえ存在しました。過去においては、 〔椎間板ヘルニア〕に対して、“飛び出した軟骨を手指で物理的に押し込む”と大真面目に論じ、単なる“腰筋痛”を『椎間板ヘルニアを完治させた』と語る豪傑も存在しました。
1980年頃までの椎間板ヘルニアの“確定診断”は、レントゲン画像結果と患者の愁訴を加味した医師の判断によるものでした。レントゲン画像には写らない『椎間板のヘルニア』を腰椎の状態から読み取り、個人差の激しい自覚症状を問診し、判断し、確定されました。MRIの普及で誤診は皆無になりました。
過去20年以上、教師猫の治療室での『椎間板ヘルニア』に対する基本的施術法に変化はありません。かつては、「椎間板ヘルニアの症状が改善されたのではない、病名自体が“誤診”」と医師に告げられ、患者さんと共に“何度”悔しい思いをしたことか。今は過去の思い出です。MRI・・・バンザイ・・・。
教師猫の疑問
教師猫の治療室を訪れる〔たちの悪い患者〕は、何かにつけ“何でも”教師猫に報告(相談)してきます。
【教師猫の治療室での患者Aと教師猫との会話】
患者B | 先生、彼がね。私のこと『すき』っていったの。 |
教師猫 | へ~ぇ。お前には『隙間』でもあるのか。 |
患者B | 違うよ・・・。『好き』っていってくれたの。 |
教師猫 | そう。良かったね。ところで何センチくらい好きだって。 |
患者B | ・・・。 |
教師猫 | 何センチ、何グラムくらい好きか。聞いたのかい。 それとも、彼は君を『何と比べて好き』っていったの。 ゴキブリかい、それともガマガエルと比べたのかい。 何と比べて『好き』っていったのか聞いてごらんよ。 |
患者B | そんな~ぁ。・・・そんなこと聞けないよ。 |
教師猫 | ダーメ。大切な事柄だから、絶対に確認しないとダメ。 彼がどんな意味で『好き』という言葉を使うのか。 |
この後は、教師猫の『分別なき説教魔』の本質が発揮されます。患者とのその後の会話は略しますが、彼からの『好き』という言葉の意味や重さは、彼女にとって重要な内容のはずです。しかし、彼女は彼からの『好き』という言葉に酔いしれ、自己流に解釈し、彼に内容(真意や程度)を確認しようとはしません。
同様な事柄が治療家と患者さんとの間にも生じているようです。疾患原因を治療家が『ストレスです』と告げ、患者さんが『ストレスですか、わかりました』と受けます。『無理をしないように注意してください』『はい、わかりました』、このとき『ストレス』とか『無理』の定義がお互いに交わされているのでしょうか。双方が用語をおのおの勝手に解釈したままで“会話が進んでしまって”本当に良いのでしょうか。時に、治療家自身が自らが使用する用語の定義や見直しをすべきではないでしょうか。
情報過多や知識不足による弊害
急速な高齢化により、骨折→寝たきり→認知症などが急増しています。これらに伴い、一般の人々にも骨密度や骨粗鬆症に対する関心が高まることは良いことだと思います。しかし、一般にもたらされる情報の多くがコマーシャルメッセージ(商業宣伝)であることを知ることも重要です。骨折→寝たきり→認知症などの不安は大きなマーケットを生み出します。ここを流れる情報が医学的に正しいとは限りません。
写真は、骨密度が正常なけい骨の断面とその一部を拡大したものです。骨の強度は骨梁に関わることや骨の構造が本来“疎”であることを患者さんに認識させてください。さらに、骨粗鬆症や骨の強度低下をカルシウム摂取のみでは予防できないことを教えてください。(治療家が学習すべきは当然です)
カルシウム不足は骨粗鬆症や骨の強度低下の原因になりますが、カルシウム摂取のみで骨粗鬆症や骨の強度低下を予防することはできません。 〔骨の代謝と再生〕には骨刺激も必要な根本的条件です。
カルシウム不足による、骨折→寝たきり→認知症などの不安にかられた結果、カルシウム過剰摂取が原因で生じた肩関節の石灰沈着(異栄養性石灰化)の症例です。〔写真は肩関節のヘリカルCT画像〕
情報過多や知識不足による弊害の一例と認識してください。
教師猫が語る教師猫流“愛の定義”
(こら~ぁ。タイトルを読んで、大笑いしてふき出すな。)
教師猫が教師猫の治療室を訪れる“たちの悪い患者”に無理に聞かせている『教師猫流“愛の定義”』を抜粋して紹介します。用語を理解するには、分けることと、分けた条件を理解することが肝要です。
・愛とは何か。〔辞書で引いてみた〕
『いつくしむこと。思いやり。かわいがること。大切にすること。このむこと。めでること』だそうだ。
・では、恋とはなにか。〔辞書で引いてみた〕
『強くひかれて、切なく思うこと。思慕の情』と書いてあるがよく分らない。
・愛も恋も“相手を好き”という感情の仲間のようだが、その区別は何処にあるのだろう。
教師猫は、愛を『相手意識のみ』、恋を『自己意識のみ』の“好む”感情の仲間と定義した。
さらに、愛の行動を『老人的』、恋の行動を『幼児的』と便宜上名付けた。
高くて、寒く、風の強い山頂で、水不足に耐え、一輪の花が咲いていたとします。この花を好きになった人が、“自己犠牲”という観念を抱かず、花(相手)のことのみ考え、山頂まで水を運ぶとすれば、これを『花を愛した行動』と考え、“好き”という感情のまま、手折って自宅に持ち帰えれば『花を恋した行動』と教師猫は説きます。“自己犠牲”という観念を抱かず、相手の幸せのみを願う感情を『愛』と呼び、孫娘のために良き結婚相手を探すお祖父ちゃんの姿に例えます。当然ですが、お祖父ちゃんの心に“自身”という意識は存在しません。“相手を無視した好き”という感情を『恋』と呼び、金魚鉢の中に手を入れ、金魚を追い回す幼児の行動に例えます。金魚をいじめているのではありません。金魚が好きなのです。
これが、『教師猫流“愛の定義”』です。正しいか否か、それは分りません。相手が寄せてくれる“好意”。自分が相手に感じる“好きという感情”それが愛なのか恋なのか。双方が入り混じるのが恋愛です。
比喩的な知識習得認識
『指圧は、解剖学的に体系づけられ、疾病の予防と治療を目的とし、手指のみによって押圧することで、○○の向上や△△効果が“◇◇のように”得られる』と比喩的に解説できる知識習得も不可欠です。