情動と理性脳(4)
情動と自律神経
動物脳(情動)が興奮すれば、自律神経は如何なる状況であれ、交感神経優位となります。理性脳(情操)が興奮してしまった動物脳(情動)を如何なる手段で抑制しても、言動は抑止することができますが、情動興奮により生じた交感神経優位の状態を直ちに副交感神経優位に変化させることは極めて困難です。
〔ある光景〕のように、興奮した動物脳(情動)が作り出した、『情動エネルギー』を発散せず(できず)に現場を去るといった状況の変化は、動物脳(情動)が興奮したまま、言動が“理性脳(情操)の抑制”から解放される状況となることが多く、極めて『正のフィードバック』が生じやすい状態を作り出します。
自律神経失調症は、交感神経優位の状態にも関わらず、理性脳(情操)により“交感神経優位状態の言動”が抑制されたために、自律神経が混乱し失調状態に陥ったものです。因果関係を再度認識し、次に進んでください。
これで解決・・・?
自律神経失調症の改善手段として、一般的に用いられる方法は『薬物投与』や『カウンセリング』が主です。運動療法や自己暗示法についても概説します。
薬物投与
自律神経失調症で神経科や心療内科を受診すると、自律神経に作用する薬物が投与されます。交感神経の興奮を鎮めたり、交感神経への刺激の伝達を遮断するなど、個人や症状にあった薬剤が、慎重に考慮され処方されると考えます。しかし、交感神経と副交感神経は、様々な環境の変化に対し、速やかに優位性を定める必要があります。仮に、交感神経遮断(阻害)薬が投与され、作用している間は、交感神経への刺激の伝達は遮断(阻害)されます。薬物投与により、情報が遮断(阻害)された状態で、正常な働きを求めることは可能でしょうか。
カウンセリング
自律神経失調症は、『心因性』で患者の“心掛け”。心理的状態が落ち着けば、症状は改善すると、患者の“心理に訴える”カウンセリングが多く行なわれます。 自律神経失調症の発症に至る因果関係を再度認識してください。動物脳(情動)が理性脳(情操)に“交感神経優位状態の言動”を抑制された結果、自律神経が混乱し、失調状態に陥ったものです。カウンセリングの“的”がはずれたら、より強い理性脳(情操)の抑制力を獲得させることを強要する結果や理性脳(情操)の抑制が解除され、動物脳(情動)の暴走に拍車がかかる危険性さえあります。 不安定で、個人差の激しい患者に、マニュアル通りで成果が望めるでしょうか。
運動療法
様々な運動法を取り入れ、動物脳(情動)が作り出した『情動エネルギー』を発散させることで、自律神経の働きを正常化(さらには強化)させる方法があります。しかし、自律神経失調の、倦怠・のぼせ・多汗・無汗・めまい・頭痛・腹痛・下痢・動悸・息切れ・不安・不眠などの多彩な症状で苦しむ患者に、動物脳(情動)が作り出した、『情動エネルギー』を発散させるほどの運動を要求すること自体に、疑問を感じます。運動療法は軽症や予防を中心とした“鍛錬法”と考えます。
自己暗示法
「自分自身に前向きな暗示をかけるように」と言われ、そうしようと努力するたびひどく落ち込み、自分を責めます。「時間が解決してくれるから、気長に」と言われれば、“一瞬でも早く治りたい”と焦ります。最後に、先生が自律神経失調症になってくれたら、こんなことは言わないだろうな・・・臨床現場の“患者の声”です。
押圧法による対応
押圧法では自律神経失調症に対し、不安定で個人差の激しい理性脳(情操)や動物脳(情動)には関わりません。情動興奮により生じた交感神経優位の状態を押圧法で、“いかに鎮め、症状改善に導く”か、その手法や医学的論拠は追って説明しますが、個人差の少ない副交感神経にダイレクトに関わっていきます。