椎間板ヘルニア(2)
神経症状が少ない椎間板ヘルニア
腰椎椎間板ヘルニアとは、腰椎椎間板の髄核が脱出した状態を言います。主な原因は腰椎椎間板の線維輪に生じた損傷や変性が原因で、下位腰椎が好発部位です。脱出した腰椎椎間板の髄核が脊髄や神経根を圧迫した場合に様々な神経症状を起こします。指圧関連資料集No.6での書き出しの文章を入れ替えたような説明になりますが、腰椎椎間板ヘルニアで様々な神経症状が出現するのは脱出した髄核が脊髄や神経根を圧迫した場合に限定されます。すなわち、髄核の脱出方向が主に後方の場合です。髄核の脱出方向が前方で、脱出した髄核が脊髄や神経根を全く圧迫しない場合には神経症状の出現は生じません。
椎間板ヘルニアのMRI画像を掲載します。本症例は完全な髄核前方脱出とまでは言えませんが、
参照資料としてください。髄核の脱出を観察しやすいように脱出部位を拡大しました。
本症例の自覚症状
掲載した腰椎椎間板ヘルニアMRI画像の患者は、多くの不定愁訴を訴えました。主訴は左腰痛および左股関節痛で激痛ではなく鈍痛でした。日替わり的に多くの愁訴が出現したなかで常に存在したのが左腰部および股関節部の鈍痛でしたのでこれを主訴と判断し対応しました。 本患者の愁訴は片頭痛・頭頂部痛・後頭部痛・頭重・幻暈・耳鳴・顎関節痛・側頚部痛・後頚部痛・首こり・肩こりなどと頭頚部に限定しても数多く、その愁訴は全身におよびました。それは、まるで患者が自身の医学知識を駆使し、患者自身が知識として知る限りの苦痛を訴えているかのようにも思えるほどでした。
日和見的愁訴
全ての愁訴が同時に出現することはありませんでしたが、患者は主訴と共に毎回2~3の不定愁訴を訴えました。日替わり的に出現する多くの不定愁訴はおおむね他覚的に同意できる診断結果や他覚的診断結果から類推できる心因性疾患でした。他覚的診断結果から指圧が有効と判断し、治療を継続しておりました。提供されたMRI画像情報により、不定愁訴の出現原因が明確となりました。 他覚的診断により判断した日和見的愁訴原因をMRI画像情報により再確認した症例として報告致します。
椎間板の老化や変性
セカンドオピニオン思考や情報開示の風潮が高まり、患者が希望すれば病院での検査情報などの提供を受けやすくなっています。なかでもMRI画像は施術に重要な多くの情報を含んでいます。
押圧法でいう“診断即治療”は筋性防衛を解除した後の触診により、圧加減を行ないます。さらに、常に自支姿勢を保ちますのであらゆる場面で危険回避は可能です。しかし、より多くの患者情報は治療期間の短縮や施術による危険回避の全てにおいて有益です。特にMRI画像は指圧治療に直接結びつく有益な情報を提供してくれます。詳細は講義で説明いたしますが指圧師の立場からMRI画像情報を解析する独自の知識や判断力も重要です。掲載したMRI画像は椎間板ヘルニアと脊柱分離症のMRI画像です。これらの画像診断以外に指圧師として重要な情報を多く含んでいます。判断がしやすいように画像処理を行ないました。左右のMRI画像を比較し、各自で一考してください。
困惑した“手書き数字”
最近、患者さんから提供されたMRI画像(写真・右)を見て、ため息と困惑が生じました。通常のMRI画像(写真・左)と比較し説明します。MRIは身体のあらゆる角度の断面画像を容易に得ることができます。
この画像は腰椎椎間板の状態(ヘルニアによる脊髄や神経根の圧迫など)を診断する目的で、人体の水平方向断面画像を撮影した時に添付されるマップ画像です。このマップ画像により、断面画像の部位や角度を知ります。腰椎椎間板の情報を得るためには、目的の腰椎椎間板に対し水平方向の画像が必要なはずですが・・・左右のマップ画像を比較すれば、ため息理由が想像できると考えます。
患者から報告された、医師の患者対応にさらに困惑しました。画像を見ながら「うん・うん」とつぶやいた後に「シップを出しておく、もっと痛くなったら来なさい」と告げられただけで、MRI画像についての説明は全くなかったとのことです。画像に残る腰椎部の“手書き数字”の必要性が全く理解できません。
MRIマップ画像(追加)
MRI画像からマップ画像を切り抜いて掲載し説明しましたが、MRIやCT画像を見慣れない方から
「マップ画像の意味が分からない」というメールを頂きましたので、画像を追加し説明します。
MRIやCT画像などでは、一枚の写真の中に複数の診断用断層画像とそれぞれの断層撮影画像の部位や断層角度を示す画像(写真右上)を添付します。 この部位角度を示す画像をマップ画像と呼びます。なお、本HPで掲載しているMRIやCT画像は、複数の診断用断層画像の一部を拡大したものです。
さらに、個人情報保護や解説用に画像処理を施していますので、本来のMRIやCT画像とは異なります。