指圧はあん摩に非ず
現在、あん摩師・マッサージ師・指圧師に資格的な区別はありません。しかし、あん摩・マッサージ・指圧は異なる手技です。これらを区別するとき、各々の手技を基本手技とその他の事柄に分類すると区別が容易になります。あん摩とマッサージの叩打法、揉捏法、圧迫法などの基本手技の異なりは非必須的な要素で異なります。あん摩とマッサージではその他の事柄(施術の方向や滑剤の使用など)が必須的に異なるのです。しかし、指圧は基本手技において他の多くの手技と必須的に異なります。他の手技との『その他の事柄の違い』など、論じる意味もないのです。
(ここでの非必須とは"不可欠ではないが肝要である"という意味を表します)
指圧とあん摩の違いを質問され「指圧は文字通り指で圧し、あん摩のように叩いたり揉んだりしません」という説明には唖然とします。圧するのは“圧迫法”と言い、医師は止血に多用しますが、あん摩師自身は“危険が多い”と敬遠するあん摩の基本手技の一法なのです。指圧独自の “押圧法”は西洋医学での止血法やあん摩の一法である圧迫法とは似て非なるものなのです。
押圧法と圧迫法の異なりや、押圧法の必須条件と非必須条件などを抜粋し説明します。
- ・加圧姿勢
- 床面に両膝(片膝)をつき、両母指を重ねて床面に接し、加圧姿勢をとります。この時、加圧面で身体を支えていない。すなわち、手指で自らを支えない(持たれない)自支の姿勢が押圧姿勢の必須条件です。これを欠くと、それは圧迫法の加圧姿勢となり、圧迫姿勢と呼びます。
- ・圧の方向
- 押圧法では垂直圧を原則とします。しかしこれは押圧法の非必須的条件です。
- 加圧および減圧中に圧の方向を変化させないことが押圧法における必須条件です。
- ・手指操作
- 圧迫法の手指操作は圧排動作で行います。しかし、押圧法は把握動作を必須条件とします。
- 「母指圧に四指の支えは大切です」と言われますが、これは押圧操作に対する誤認識です。
- 把握動作で行う押圧操作には、四指の支えは“大切”ではなく“必須”です。
- ・加圧による押圧圧と圧迫圧
- 押圧法は押圧を行うことが必須な手技ですが、押圧法でも圧迫圧を加えることは可能です。
- 押圧や圧迫は圧法をさし、押圧圧や圧迫圧とは圧力を意味します。押圧圧と圧迫圧の異なりを動脈への加圧を例に説明します。血管のわずかな変形から血流停止寸前までを押圧圧と呼び、それ以上の圧力を圧迫圧と呼びます。すなわち、その動脈の最低血圧以上で最高血圧以下の圧力が押圧圧であり、それ以上は圧迫圧です。
『診断即治療は押圧法の妙であり、この真髄への入り口は、押圧法に対する認識からです』