エコノミークラス症候群(肺塞栓)について
脳性麻痺児にとって、エコノミークラス症候群は“雲の上の出来事”ではなく、身近な病気です。病気の原因を知り、日常生活に十分な配慮が必要です。
エコノミークラス症候群とは、旅客機の着陸後に原因不明で重篤な疾患が発生。当時、発症がエコノミークラスの乗客に限っていたので、この名で呼ばれました。
現在では、原因も究明されました。しかし、短時間に呼吸停止や心臓停止を起し死亡するケースも希ではない、重篤な疾患です。病名は“肺(動脈)塞栓(症)”と言います。下肢や骨盤の静脈で発生した、血管内の血塊(血栓)が主な原因で心臓(右心系)を経て、肺(肺動脈系)の血管を閉塞させる病気です。
エコノミークラス症候群とは、“旅客機(エコノミークラス)の乗客”に発症する疾患ではなく、エコノミークラスに “起こしやすい条件”が重なり、さらに、その殆どの条件が、脳性麻痺児の日常に潜んでいることを学習し、注意してください。
エコノミークラスの乗客が、肺塞栓を起こす原因は静脈由来の血栓です。
なぜ静脈由来の血栓がエコノミークラスの乗客に多く発生したのでしょう。
最大の原因は、狭い座席と長時間の同一姿勢にあります。
- 1・下肢の静脈の圧迫:同じ姿勢を保つため、特定部位(血管)が圧迫される。
- 2・下肢の運動不足による血流の停滞:歩行や運動が長時間妨げられる。
- 3・血液の濃縮:排尿を嫌い、事前に水分を制限しやすい。
- 4・個人の危険因子:下肢の静脈瘤、高脂血症などの個人的素因。
エコノミークラス症候群は、条件がそろえば、如何なる場所でも発症します。
長時間に及ぶ車椅子での下肢の静脈への圧迫は、考慮しなければなりません。水分不足も注意が必要です。特に運動機能障害児は、リスクが高くなります。