情動と理性脳(9)
自律神経失調症の実技について概説します。これは、『てのひらの会・咲夢』の会員同様に『親子という、ごく自然で特別な関係』で施術する講習を受けた者や押圧法の習得者が行なって有効な手段です。指圧は、免許が必要な医療行為です。一般の方は、絶対に“真似”をしないでください。〔危険です〕
自律神経の異常緊張(過緊張)簡易診断法
自律神経の異常緊張診断法は数多くあります。愁訴(自覚症状)のみでの診断も可能ですが、日常的な体調の判断にも役立つ、簡易診断法を紹介します。
交感神経の異常緊張(過緊張)によって、最も生じやすいのが手掌部や足底部の“発汗”で、次に手指部や足趾部の“冷え”です。体幹(胴体)と手指や足趾の温度を触診し、日常的に温度差をチェックする習慣をつけてください。
体幹(胴体)と手指や足趾の温度差が激しいほど、交感神経異常緊張(過緊張)状態にあるといえます。通常、顔面の温度は上昇し顔色は紅潮します。これは、交感神経異常緊張(過緊張)により、体表面の血管が収縮し、散熱が阻害され“うつ熱状態”になり深部体温が上昇します。そのままでは脳温も上昇するので“脳温上昇防止”のため顔の血管を拡張させ、さらに額や顔から汗をかきます。顔の紅潮や額の汗は“脳温上昇防止”のための『ホメオスタシス機能』です。
〔備考:臨床家の発熱チェック法〕
発熱の有無や程度を知るには、体温を測るのが一般的ですが、教師猫の場合体温計を用いることはまずありません。患者さんの『平熱』も知らず、測定誤差もある、単なる体温計の数値のみでは、高熱以外は適切な対応は取れません。
教師猫が用いる手段は触診です。発熱の疑いがある場合は“殿部と背腰部”の皮膚温を触診で比較します。『平熱』であれば、殿部の皮膚温は背腰部より通常は低いものです。この方法なら、平熱がわからなくても発熱の判断ができます。
次に、皮膚の状態も観察します。背部の皮膚が乾燥している状態では、発熱の継続や“さらなる発熱”が予想され、解熱が始まると背部の皮膚は湿ってきます。日常的に殿部を触診し、平常時の皮膚温や皮膚感を覚えておくのも有益です。
〔これらは、個人差があります。医師に相談し指示・指導に従ってください〕
交感神経刺激による自律神経緊張緩和法
身体各部(末梢)から交感神経を刺激し、身体の“ホメオスタシス機能”を活性化させ【負のフィードバック】を起させ、自律神経の交感神経異常緊張を緩めます。自律神経失調症の“諸症状”(倦怠・のぼせ・多汗・無汗・冷え性・頭痛・めまい・肩こり・腹痛・食欲不振・便秘・下痢・不安・不眠・動悸・息切れ等)を緩和します。
【施術部位】
施術は、肩甲間部と背部を“主部位”、手指部と足趾部を“副部位”とします。
自律神経失調症の“諸症状”出現部位とは異なりますので、注意してください。
〔施術時間には個人差があります。必ず、担当講師の指導を受けてください〕
【施術前の触診】
主部位(肩甲間部や背部)と副部位(手指部や足趾部)の温度差を触診します。交感神経の緊張(過緊張)が強いほど温度差が生じ、副部位(手指部や足趾部)を冷たく感じます。主部位を肩甲間部の左右と背部の左右に四分割して、それぞれの温度差を確認します。副部位も同様に、左右の手指部と左右の足趾部との四箇所の温度差を確認します。(厳密に体温を測る必要はありません)
【施術の順序と施術の比率】
施術順序は、主部位(肩甲間部や背部)を終了して、副部位(手指部や足趾部)に移ります。施術の比率は、主部位(肩甲間部や背部)の割合を7とし、副部位(手指部や足趾部)は3とします。(施術比率とは施術時間の割合です)
施術の“主部位”である、肩甲間部と背部を触診し、温度差と硬結をさがします。“主部位”の施術(加圧)の優先順位は、冷たい部位、次に硬結部位となります。冷たい部位や硬結が複数あるときは、最も冷たくて硬い部分から始めます。
触診がうまくできない場合は基本の順序に従ってください。お子さんに声をかけ『不快ではない部位』に母指および三指を置き、筋性防衛を確認、ディファンスを解除し、徐々に加圧するという順序を守りながら施術します。〔無理強いは厳禁〕
主部位(肩甲間部や背部)の部分的な温度差や硬結、またはお子さんの表情が緩和してきたら、副部位に移ります。副部位の施術順序は、(施術前に)冷たいと感じた部位から行ないます。施術は、母指圧や三指圧で行ないます。母指圧や三指圧をお子さんが嫌がったり、お母さんが苦手な場合は、母指球や小指球による掌圧で丹念に行なってください。〔手指と圧法の名称〕を参照してください。
有資格者の場合は〔腹部の過緊張〕や 〔小児喘息臨床〕の知識と技術を不可欠としますが、『てのひらの会・咲夢』会員の皆さんが、『親子という、特別な関係』で“わが子”に施術する場合は勉強会での担当講師の注意を守れば安全です。しかし、少しでも違和感や疑問があれば、担当講師か教師猫に連絡をください。
副交感神経刺激による自律神経緊張緩和法
“副交感神経”刺激による自律神経の緊張緩和には、上記“交感神経刺激による自律神経緩和法”より高度な押圧技術が必要ですが、『てのひらの会・咲夢』会員の皆さんのように『親子という、ごく自然で特別な関係』で施術する場合は異なるようです。技術不足を“親子という信頼関係”が埋めてくれます。親子には最も有効な手段と考えますが、効果を焦ると・・・お子さんに完全に嫌われます。
【加圧部位と施術法】
加圧部位は、腹部です。施術法は、『てのひらの会・咲夢』会員の皆さんが最も慣れている“腹部指圧法”の応用ですから、特別に身構える必要はありません。
自律神経の副交感神経を最も安全に効率よく刺激するのは“腹部指圧”です。施術法は〔押圧操作はなぜ腹部から〕の腹部操作の実技を行なってください。
【施術の心得】
『てのひらの会・咲夢』会員の皆さんが、副交感神経刺激による自律神経緩和法をお子さんに行なうときに重要なことは、施術技術ではなく、“施術の心得”です。
『親子という、ごく自然で特別な関係』だから存在する“特別な信頼”がお母さんの技術不足さえ埋めてくれます。お子さんは、“ウソツキに変身”するお母さんを 知っています。お子さんは、体験的に『痛くない』というお母さんの言葉に敏感に反応し、“無用な警戒”をします。お子さんが警戒態勢に入ればお母さんたちの押圧技術で効果は望めません。苦痛を無理強いして、お母さんの武器である“信頼”を損なわないでください。“嫌なら止める”の約束厳守が絶対条件です。
自律神経の異常緊張(過緊張)が緩和すると
自律神経の異常な緊張(過緊張)が緩和されると、手掌部や足底部の“発汗”や手指部や足趾部の“冷え”が改善されます。さらに、情動の『正のフィードバック』が治まり、外部からの刺激に対する過剰反応が軽減し、“ホメオスタシス機能”が活性化していきます。お子さんの“心身”は、これらの『押圧効果』を繰り返し体験することで、『押圧効果』を学習していきます。押圧効果を学習すると、これらは“条件反射”に変わり、短時間の押圧操作で、効果が得られるようになります。
技術不足を案じるお母さん、お子さんが〔指圧に慣れたらバトンタッチ〕します。案じる前に、担当講師に気軽に相談してください。教師猫もいますよ。