自動運動学習獲得報告
〔指圧研究会・咲晩〕メンバーH・S君より、保険制度を利用した訪問医療マッサージで、往診治療を行う脳性麻痺のまり(仮名)ちゃんが自動運動を学習し獲得したとメールで報告がありました。
以下メールでのやり取りです。
着信(2005-01-26)
出ました!今日、まりちゃんが自分の意志で右腕を床から20センチほど挙げ下ろしを六回しました。
二年目にしてやっと出ました!「お父さんが帰ってきたら教えてね」と言ったらとても嬉しそうでした。byH・S
送信(2005-01-26)
H・S。やったな。おめでとう。H・Sの涙の勝利だ。成人の脳性麻痺患者の運動機能の改善は快挙です。今後の君の自信だけでなく、咲晩の歴史に刻まれる事実となります。平島。
咲晩メンバーへ送信(2005-01-26)
先程、H・Sさんから担当している脳性麻痺患者さんの運動機能の変化について 「自分の意志で右腕を床から20センチほど挙げ下ろしを六回しました。二年目にしてやっと出ました!」との報告がありました。脳性麻痺患者(成人)さんの運動機能の学習獲得は快挙です。咲晩の歴史に残すべき出来事です。
泣きながら、諦めなかった彼を称え、お互いに励みましょう。平島。
着信(2005-02-06)
反応が遅れてしまい、スミマセン。
あの後、風邪をこじらせて寝込んでしまいまして、今日やっと復活しました。 まりちゃんの件、色んな方にメール頂きました。ありがとうございました。普段、名ばかりの(咲晩での役職)でろくな働きもしていないモンで、メンバーの方から今回のような反応があると「こんな俺でも少しは人の役に立ってるかな?」とホッとします。『2年目にして」なんて書きましたが、確認したら平成14・11月から往診してたので3年目の間違いでした。今回は喜びよりも「やっと出たか~、やれやれ。」というのが本音でした。
3年間よくやったなあ、という事より「もっと早く結果を出す事ができたのでは?俺ではなく他の人だったらもっと早く、もっと違う結果が出せたのではないか?」等と考えました。 特別、具体的な施術内容や部位を教わった訳でもなく、ただバカの一つ覚えで「腹と手指、足指」。毎週々、2年以上も・・・。もうちょっと賢いやり方があっただろうな・・・と。先日、どのような家族の反応があったか楽しみにして往診に行ってきました。「まりちゃんの年齢で運動機能の獲得ってのは珍しいらしいですよ」とお母さんに言ったら「凄いねーまり。十何年間頑張ってきた成果がやっと出て来たんだねー。」 「!!!・・・」 (俺のやってる事、と言うよりも“俺”、なめられてるなぁ・・・。)落胆しました。何ともはや、励ましのメールをくれた人達になんだか面目ない思いでした。 今回の件で学んだのは、“患者の反応の一言二言で一喜一憂するな”って事。 やはり感謝されたかった、褒められたかったのは本心としてあります。 感謝されるだけを目的にしてはだめかな?と。こんな事ぐらいガッカリしてるヒマはないぞ、どんどん進め!ってことかな?と思いました。 今回の成果が、“指圧の成果”なのか“十何年間、頑張ってきた成果”なのかは恐らく、まりちゃん自身が判ってる事だとおもいます。 なめられないように技術を磨くのは当然として、それを持つ自分自身をもっと磨かなくてはと思いました。 文章がちょっと変ですが病み上がりという事で勘弁してください。
H・Sでした。
送信(2005-02-06)
H・S。
>3年間よくやったなあ、という事より「もっと早く結果を出す事ができたのでは?
>俺ではなく他の人だったらもっと早く、もっと違う結果が出せたのではないか?」等と考えました。
>特別、具体的な施術内容や部位を教わった訳でもなく、
>ただバカの一つ覚えで「腹と手指、足指」。毎週々、2年以上も・・・。
>もうちょっと賢いやり方があっただろうな・・・と。
「○○だったら~かも知れない」と問われると、私はワンパターンで「YES」と答えます。
否定できない仮説だからです。しかし、現実にまりちゃんに、何処の誰なら『バカの一つ覚え』で、腹部と手指を毎週毎週2年以上、施術できますか?H・S。君が真理ちゃんへの施術で、いかに苦しみ、 涙して、私に電話し、何度叱咤されたか、覚えているだろう。私は大半を忘れましたが。まりちゃんの運動機能の改善を真剣に願い、君ほどまりちゃんのために苦しんだ治療家は他にいない。まりちゃんを「投げ出せる」とでも言えるのか?冗談にも言えないだろう。言えるものなら言ってみろ。
「腹と手指、足趾」の指圧は具体的な部位に対する具体的な施術内容です。押圧効果が、今の君たちが持つ知識や理論をはるかに超えることを体験で積みなさい。
>先日、どのような家族の反応があったか楽しみにして往診に行ってきました。
>「まりちゃんの年齢で運動機能の獲得ってのは珍しいらしいですよ。」と母親に言ったら
>「凄いねーまり。十何年間頑張ってきた成果がやっと出て来たんだねー。」「!!!・・・」
>(俺のやってる事、と言うよりも”俺”、なめられてるなぁ・・・。)落胆しました。
>何ともはや、励ましのメールをくれた人達になんだか面目ない思いでした。
H・S。落胆するな。私も同じ様な思いを何度も経験させられている。君の気持ちを察することはできると思う。しかし、忘れてはいけません。私たちは『お金』を頂いて仕事をしているプロです。「でも、褒められたい」そうです。私もそう思います。そんな時はこうしなさい。「まりちゃんもお母さんも頑張りましたね」とまりちゃんと家族の苦労をねぎらってあげなさい。そうすれば「先生のお陰です」と褒めてもらえるかも?
>今回の成果が“指圧の成果”なのか“十何年間、頑張ってきた成果”なのか
今回の結果は、まりちゃん自身の運動機能獲得により生じた結果です。まりちゃんや家族の長年の努力が一番だといえると考えます。しかし、H・Sの施術なしでは理論的にも現実的にも考えられない結果だと判断します。私たちは患者や家族が病気と戦う時のチームの一員なのです。患者さんやご家族がなしえない部分を手伝うのが私たちに与えられたチームの一員としての仕事です。私たちはプロなのです。 まりちゃんへの仕事はもう完了ですか?まだまだ途中のはずです。それともギブアップしますか?
H・S。『お金』を頂いていて、感謝までされたいのなら、もっと苦しみなさい。まりちゃんは曜日を数え、 時計を見ながら、H・S、お前の往診を笑顔で待っているぞ。行って来い、H・S。そして、泣いて来い。
平島。
後書き
〔指圧研究会・咲晩〕メンバー諸君。
脳性麻痺患者さんの運動機能学習習得には、患者さん側に過緊張・筋肉の廃用性萎縮・関節の拘縮・病的反射・メンタル・ディファンスさらにマッスル・ディファンスなど数えたら限がないほど悪条件が揃っています。さらに、これらを放置すれば、著しい悪循環を招くと言う、脳性麻痺に対する正しい認識を持つ患者さんや家族は極稀です。脳性麻痺の運動機能障害は、数年前と同じ状態を維持できれば、それは大いなる成果なのですが「何年(訓練を)やっても、成果が出ない」と言う声も少なくありません。
諸君が行なうことは、今回のH・Sさんのように、丹念に丹念にくり返して、域値を超えることです。
諸君は“自分の眼で見た事実”を周りに何度否定されましたか。その度にどんな思いをしてきましたか。 今回の彼の成果は、快挙です。咲晩の歴史に残すべき出来事です。しかし、彼が特別ではありません。
彼の努力は認めます。さらに彼以外のメンバーからの好結果の報告も届いています。押圧法が基本の基礎から習得すれば、必ず結果が出せるという証明が揃いつつあります。各自、焦らず、腐らずに、下を見ながら、基本の基礎をボールとビー玉に虐められ、泣きながら、苦しみながら、今日も積んでください。
着信(2005-02-19)
先日、まりちゃんの往診に行ってきました。お母さんの話によるとベット脇のガラス戸に手を伸ばし、すりガラスを指でカリカリ引っ掻いたりしてるそうで、その箇所を見てみると、確かに引っ掻き痕や指の脂の跡が沢山ついてました。以前には見られなかった行為で驚いているとの事。手足の血流改善が著しく、(熱でもあるのか?)と思うほどです。施術に関係なく日常的に暖かいらしくお父さんも「あれ?どうしたの?なんでこんなにまりの足暖かいの?」と驚いてるそうです。 そんな話をしてるうちにお母さんがポロっと 「本当は初めの頃、(この先生、こんなやり方で大丈夫なのかな?)と半信半疑だった。 色々な事を説明されても(本当かな・・・?)と。お父さんに『こんな事(腹と手足)しかしないんだよ。』と伝えたら『えっ?ホントに?』って言ってたし・・・。デイケアの方もそれだけでねぇ・・・。』って話してたし・・・。 こんなのって言っちゃ失礼だけど本当に効果あるのかな?って思ってた。」との事。私は「そうですよねー。 私だって毎週毎週、手足とお腹をチョコチョコっとしかやらないやつが来たら(何だ?こいつ!)って思いますよ。」と二人で大笑いした。 帰り際、「二年以上もこんなヤツを文句も言わず受け入れてくれてありがとうございます。」とお礼を言って帰ってきました。 二年以上にしてやっとお母さんとの距離が少し縮んだかな?っと言う日でした。 これだけ(手足と腹)だけで変化させられる指圧って凄いな。やってて良かったなと改めて思いました。
送信(2005-02-19)
>こんなのって言っちゃ失礼だけど本当に効果あるのかな?って思ってた。」との事。
>私は「そうですよねー。・・・(何だ?こいつ!)って思いますよ。」と二人で大笑いした。
>帰り際、「二年以上も・・・ありがとうございます。」とお礼を言って帰ってきました。
>二年以上にしてやっとお母さんとの距離が少し縮んだかな?っと言う日でした。
H・S。
長年に渡り「平島にしかできない」とか「脳が悪いのだから治療自体に意味がない」と陰口を叩かれ続けた技術の結果を現在君たちが出してくれているのですから、自分のこと以上に嬉しく思っています。信頼は結果の後に必ずついて来ます。己を信じ、押圧法を信じて励んでください。身体機能は域値を超えると我が目を疑う程の好結果を出してくれます。今後のまりちゃんに対する治療結果により以上の観察が必要となります。苦しみの中から楽しみが生まれてきます。私たちは不可能への挑戦をしているのではなく、可能性を拡大する努力を積んでいるのです。また、楽しみが増えてきました。
平島。