08・教師猫は、〜ません(4)
教師猫は、疾病治療専門の指圧師(治療家)として、現場で様々な疾患と対応しています。指圧師の臨床現場に意識不明や危篤状態の患者さんが運び込まれることはありません。このことが何を意味するのか・・・。臨床現場での指圧師の対応は疾患より“患い人”への対応が重視されなければいけないと考えます。疾患を医学的に捉え対応することも不可欠ですが、疾患のみに目を奪われず、患者さんを“患い人”と捉え対応することが重要です。患者さんは“人”です。教師猫と共に、『患者さんの心身を侵略した“病魔”』と戦ってくれるパートナーなのです。病魔との闘いにパートナーシップは不可欠です。
愁訴を取り去ろうとはしません
患者さんの“飛込み予約”を受け付けない〔予約電話への対応:参照〕、教師猫の治療室。訪れる患者さんの多くが、初診でも既に幾つかの“専門医療機関”での受療経験者です。多くの専門医療機関で必要な精密検査や治療を受けているのにその結果が思わしくない。明確な愁訴を訴えても“完治”や”異常なし”と宣告され、愁訴に耐え切れず、『藁をも縋る』思いで来院されます。『藁』になれない教師猫は、愁訴を積極的に取り去ろうとはしません。
疾病治療に限りませんが、専門家が『治らない』と宣告したものは治らないのが当然です。しかし、『治らない』ことと『治せない』ことは異なります。説明不足により混乱が生じることは避けたいのですが、臨床現場において『治る』ということは、患者自身が持つ自然治癒能力(自己再生能力や自己免疫力)によって完治することを意味します。例えば、傷口の洗浄や消毒等の行為は傷口の治療に有効な手段です。しかし、これらの行為は傷口に対する二次的な(感染予防)対策です。このような“二次的対策”のみで傷口が治れば、傷は患者自身が持つ自然治癒能力のみで治癒したことになり、『傷は治った』と表現します。しかし、患者自身が持つ自己再生能力や自己免疫力が何らかの原因で低下し、傷口の自然治癒が望めない場合を『治らない』と表現します。『治す』とは何らかの原因で低下している患者自身が持つ自己再生能力や自己免疫力などを向上させ、“治癒に導く”行為を呼びます。
紙面の都合で少々乱暴な説明になりますが、疾病治療において、『治る』のを待つ期間の重要なテーマは、その間の苦しみ(愁訴・自覚症状)をいかに軽減させるかということです。愁訴が痛みであれば、鎮痛剤の投与や指圧での疼痛緩和術などの“対症療法”がこれにあたり、『治る』見込みの高い疾患においては有効なのですが、患者自身が持つ自己再生能力や自己免疫力が何らかの原因で低下し、『治る』のを待っても自然治癒が望めない、ここでいう『治らない』疾患に対し、『治る』のを待つ“対症療法”を選択することは、時として有害無益となりかねません。教師猫の治療室を訪れる患者さんの多くは愁訴や自覚症状を軽減しながら時期を待てば『治る』疾患とは異なる、待てども『治らない』疾患患者です。
時期を待てども『治らない』疾患患者さんに「いかに対応するのですか」と言う質問に対し、教師猫は「治らないから、治す手立てを探します。それが、治療家なのです。」と答えます。重複しますが、患者自身が持つ自己再生能力や自己免疫力が低下し、『治らない』状態に陥るには、“陥る原因”があります。この“陥る原因”とは臨床的には“陥った結果”ですが、これらに対応する“原因療法”によって、『治らない』疾患を『治す』ことが可能となります。
『治らない』疾患を『治す』ための“原因療法”に不可欠な情報は、『治らない』状態に陥った原因の究明です。この“陥る原因”は、臨床的には“陥った結果”として、患者さんの身体に存在します。これを読み解くのに必要なのが、医学的専門知識による『他覚的診断』です。
奇異に思われるかもしれませんが、『治す』ために不可欠である『他覚的診断』による情報収集の最大の妨げとなるのが、患者さんの愁訴(自覚症状)情報なのです。初診でも既に幾つかの専門医療機関で愁訴(自覚症状)に対応した“対症療法”は施されています。専門医療機関の“対症療法”では改善が認められずに訪れた患者さんです。このような状態の患者さんの愁訴情報に、『治す』ために不可欠な情報が含まれていることはありえません。さらに、“対症療法”による愁訴の改善は、『他覚的診断』材料の消失原因にもなりえます。臨床の場で、愁訴を積極的に取り去らないのは、教師猫が『藁』になりたくないためです。
ベストを好みません
教師猫は、患者さんに「治療のためのベストを好みません」と伝えます。仮に、疾病治療のための『ベストの治療条件』を問われても、『ベストな治療条件』を答えることはありません。ここでいう『ベストの治療条件』とは理論的ベスト条件です。臨床経験がなく現場を知らない理論家や患者さんが考えつく内容を指します。 臨床現場には現場独自の実態があります。もちろんこれらも理論化できています。現時点では内容を略しますが、いずれ記載したいと考えています。ここでは教師猫が「ベストを好まない」ことを記憶に留めてください。