第8回 上肢のしめ
関節操作
押圧法の必須条件である把握動作・自支操作・持続圧・加減圧操作時の圧方向の無変化等や非必須条件である加圧と移動動作の分離や支点力点を定めない操作法などの基本の1つが関節操作です。
関節操作は定められた操作順序で行なうもの、各ブロックの操作を同時に行なうもの、それぞれを分離して定められた操作順序で行なうもの、あるいは全く独立して行なうもの等など多種多様です。
三人一組の実技練習
本講座での実技練習は押し手・受け手・さらに、見手(押し手の操作を指導監督する者)の三人一組で行ないます。二人で行なう場合は押し手と見手に別れます。受手の代わりは座布団でも十分です。他覚的診断を中心に行なう押圧法では(押し手がよほど未熟でない限り)受け手の助言は不要となります。だからと言って練習中で受け手になることを嫌わないで下さい。見手の助言を聞きながら押し手の操作をイメージすることが受手の“役得的学習”となります。
〔押圧法では圧加減を受け手の自覚ではなく、施術者の他覚的診断に基づいて行なうのが原則です〕
関節操作の名称は目的を表す固有の呼称
押圧法の関節操作は多種多様です。それぞれの操作に目的を表す固有の名称があります。同じ呼称でも各関節によって操作法が異なります。十分な注意が必要です。まずは基本的な三種の“しめ操作”について説明します。この操作法は一連の動作ですが、個々に分離した操作で同時には行ないません。上級者のスムーズな動作を見て、“同時に行なっている”といった誤解をしないように注意してください。
手指のしめ
手指のしめは加圧対象物の把握と加圧点に対する母指の安定を目的としています。テニスボール訓練で最後に四指を固定し、ボールの母指側がドーナツ型になるように母指指紋部を中心に押し込みます。この操作で、四指固定以後から加圧操作以前までの操作を“手指のしめ操作”または“手指のしめ”と呼びます。テニスボール訓練では、完全母指対立習得と母指球筋鍛錬のため母指加圧を行ないます。“手指のしめ”と混同しなで下さい。なお、写真は“手指のしめ”の範囲を超えた参照用の悪例です。
手根関節のしめ
手根関節のしめは、手指操作後(手指のしめを含む)の手指を安定させることを目的とする操作です。手根の回内と伸展を同時に行ないます。写真での理解は困難かと考えます。記憶に留める程度とし、本講座講師からの個人指導により習得してください
肘関節のしめ
肘関節操作は肘関節の伸展操作と屈曲操作に大別しますが、伸展操作を“肘関節のしめ”と呼びます。初級課程では主に加圧に関わります。この操作は肘関節を伸展させる一見単純な動作ですが、押圧法の必須条件(把握動作・自支操作・持続圧・加減圧時の圧方向の無変化など)や非必須条件(加圧動作と移動動作の分離や支点力点を定めない操作法など)を満たすに必要な上肢操作の要的操作です。
〔肘関節の“しめ操作”は押圧操作の必須操作で、基本中の基本操作〕
肘関節の“しめ操作”は押圧操作の必須操作で、基本中の基本操作です。しかし、一定レベルに達し、本講座講師の指導を受けるまでは、絶対に練習しないで下さい。
自己判断による肘関節のしめ操作の習得は、今までの努力を水泡に帰する結果となります。
関節操作への認識と注意
初級課程での“上肢のしめ操作”について大まかな目安として概説しました。初級課程での“しめ操作”は主に加圧に関わりますが、これらは関節操作のほんの一部です。押圧法の関節操作は多岐にわたり多種多様です。くれぐれも独自の判断による練習は謹んで下さい。基本の基礎で間違えると、それ以降の積み上げに本来不要な努力が必要となってきます。
本講座の指導方針は個人指導に重点をおいています。各人のレベルを判断し、レベルに応じた指導を行なっていきます。周囲の高レベルの受講生の操作に気を取られたり、HPで得られた知識に頼る予習は指導や習得効率を下げる結果となりかねません。基本は下を見て積み上げるものです。