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脊柱側弯・臨床特例報告

特殊な脊柱側弯症

私の小さな指圧治療院においても脊柱側弯症への対応は稀ではありません。発症原因としては様々な個人的誘因が考えられますが、指圧による改善法としては『結果として現存する他覚的症状』への対応となります。施術もそれらに準じた、『筋性あるいは骨性』脊柱側弯症対応法となります。
今回、特異な脊柱側弯について、写真撮影や写真の一部公開に承諾が得られましたので報告します。


患者プロフィールと経過

患者は30代後半の女性で、複数の病院における各種検査において確定診断を得られない痛みを伴う不定愁訴の改善目的で来院。他覚的診断では中程度の側弯が診られるが愁訴の発生機序が側弯症由来と断定できなかった。患者の話では、側弯症は中学頃に検診にて発見。当時は経過観察のために病院を訪れるが主訴もなく、医師の指示も日常生活の指導に留まり、いつしか放置。今回の愁訴に対し整形外科を受診したが側弯症と主訴となる痛みの因果関係が認められず、担当医から心因性疾患を疑われ専門医への受診を勧められた。当院での所見に、医師や医療に対する不信感や愁訴の影響と感じられる精神的不安定はあったが『迷える患い人』の範囲で慢性痛(注:慢性の痛みではありません)の兆候もなく、当院で提示した『側弯症の改善と愁訴原因解明の目的での通院』という条件に、患者の同意を得ることができましたので指圧治療を開始しました。


類のない他覚的症状

視診や触診および押圧反応に対する他覚的診断結果は私の臨床経験には類のないものでした。整形外科検査で示された結果は確認できましたが、通常、中程度の脊柱側弯症の背腰部に診られる患側側の筋萎縮や健側側の伸張による筋緊張が穏やかで、程度に応じた伸張反射も認めにくく、患側側腹部に筋性側弯症には認めにくい過緊張や内臓体壁反射を疑わせる関連痛が加圧により出現しました。
さらに、この内臓体壁反射を思わせる関連痛には一定の規則性を感じられるものの特定臓器の炎症や腫瘍を疑わせる論拠となるような規則性は認められませんでした。


奇怪な『痛み主訴』の変化

施術法としては不定愁訴のなかでも、施術前の問診による『痛み主訴』に対応した脊柱側弯改善法を用いました。施術後の『痛み主訴』や脊柱側弯の改善は良好でした。特に、脊柱側弯症状改善は患者に他覚的変化を容易に自覚させることができました。しかし、次の来院時には他部位の『痛み主訴』が出現、体位の変換もままならない程の『痛み主訴』が出現することもありました。このような状態の継続のなかで、私が患者の不定愁訴に対し心因性疑惑を抱かなかった論拠が『腹部の症状』にありました。特異な関連痛や筋性防衛に骨性・神経性・筋肉性・腫瘍等を含む炎症性、さらには慢性痛を疑う論拠は欠けるものの、『痛み主訴』と『腹部の触診』や『加圧による反応』に規則性を感じていたからです。


主訴原因と考えられる異物の出現

ある日、それまでは全く『痛み主訴』が存在しなかった部位に『痛み』が出現しました。それは左上肢の挙上に伴う患側胸部の“引きつり痛み”でした。視診と触診で確認したところ、乳房支帯を思わせる腱様の索状物で結合組織と推定しました。索状物は乳房挙上で明瞭となりました。(写真参照)

f4101.jpg

患側側へ突然の出現

乳房支帯を思わせる腱様の索状物は肋骨部から乳頭中央部まで視診することができ、乳房の挙上に伴い乳房を変形させるほど伸縮性に欠けていました。写真掲示はできませんが、触診により、陥没乳頭原因と判断することもできました。索状物を見やすくするために右写真は画像処理を施しました。

f4102.jpg

索状物は脊柱側弯の患側側に突然出現した感がありました。出現の原因は本来存在した結合組織と推定される腱様の索状物が脊柱側弯の改善と共に出現したと推定しました。


施術により消失

筋性防衛や関連痛を配慮し遠位から索状物の弛緩を目的とする施術を 繰り返すことで、患側胸部の“引きつり痛み”を緩和することができました。押圧効果により引きつり痛みの緩和と共に脊柱側弯症状も改善されていきました。現時点では乳房下部に突然出現した結合組織と推定される腱様の索状物は触診では確認できるものの、乳房挙上による“引きつり痛み”や視診による確認はできなくなりました。

f4103.jpgf4103.jpg

脊柱側弯症状の改善に伴い出現した結合組織と推定される索状物が視診的には消失しました。
消失を確認しやすいように、出現時の写真と重ねました。写真にカーソルを重ねてみてください。


詳細は調査中

現在、結合組織と推定される腱様の索状物およびその出現と消失の詳細については調査中です。
今回、特異な脊柱側弯症例の写真撮影や写真の一部公開に承諾が得られましたので報告しました。
今回の索状物の出現や消失を加味して、脊柱側弯症改善例を検討すると、過去の症例にも類似性が認められます。今後の脊柱側弯症対応時には一考すべきと考えています。





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