押圧法っていったいなぁに?

『てのひらの会・咲夢 』資料より

押圧法(おうあつほう)とは

押圧法とは、戦後に行れた手技療法の法制化で、医師以外の者が行っても有効であることを証明し、国がその効果を“医学的に認めた唯一の手技”です。
押圧法を一言でいえば疾病治療専門の手技。あるいは、高度な手技療法です。さらに、親子という『ごく自然で特別な関係』で行なえば、プロでも困難な施術や治療効果が大いに期待できる『わが子のための手技療法』ともいえるものです。

押圧法は指圧のことなのですが・・・

押圧法とは、手指による種々の押圧操作によって、身体に生じる様々な作用を利用し、疾病の治療を目的とする手技です。簡単な表現をすれば、『指で押して病気を治す技術』です。「あぁ~、指圧のことですね~。指圧なら知っています」と答えられると、実は説明するのに大変戸惑ったり、困ったりしてしまうのです。

普及したのは用語のみです

指圧という用語は『指圧の心母心・おせば生命の泉湧く』というスローガンと共に日本中に広まり、現在では、日本語では唯一の国際共通医療専門用語として、諸外国の医学書にも“SHIATSU”と表記されています。しかし、普及した手技の内容は、本来の独自の手技である指圧とは別物で、似て非なる手技でした。

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【指圧の心母心・おせば生命の泉湧く】


「指圧」という法文用語の語源

指圧の語源のお話です。指圧を日常用語として捉え、“指で圧すから指圧”という意味で解釈するとすれば、その用語の起源はかなり古いものだと思われます。しかし、ここでの「指圧」という単語は法文(法令の文章)の中で使用される用語を指します。「指圧」の法文用語としての語源は、50年程前です。戦後まもなく、国は手技療法に対し、従来の鑑札制度の廃止および免許制度の導入を定め、法制化に着手しました。指圧の語源は、一般的な“指で圧するから指圧”という意味ではなく、法制化の準備段階で、浪越徳治郎先生が少年時代に創始された“あん摩やマッサージとは異なる”独自の手技である『押圧法』を表す用語として国に提出されたものです。そして後の法制化に伴い、法文化した法文用語です。つまり、「指圧」の名付け親は、『押圧法の創始者』である浪越徳治郎先生です。

手技療法の法制化

戦後に行なわれた手技療法の法制化には、国の意図が見え隠れしていました。その1つに、あん摩・マッサージ以外の手技療法の全面廃止が感じ取れました。あん摩・マッサージに対しては、その医学的有効性の証明を不問としましたが、それ以外の手技療法に関しては、『医師以外の者が行っても有効であることを、証明せよ』という条件が課されました。当時、法制化のために届け出た数百種類の療法は医学的な有効性を期限内に証明できずに、法制化を自退または却下され消えていきました。この法制化の準備段階で、医学的有効性を証明できた手技は浪越徳治郎先生が届け出られた押圧法(指圧)のみでした。

手技療法免許の統一

法制化(免許制度施行)以前の鑑札制度時代にあん摩師を志すものは、あん摩の師匠に弟子入りし、師匠からあん摩の手技を専修しました。国が定める専修期間を修練し、師匠から認可を得、国から鑑札を受け、あん摩を業(専業)として営むことができました。法制化後は厚生大臣認可の各種学校で、手法が異なる3種の手技を学課と共に2年間(現行3年)学び、あん摩・マッサージ・指圧師の免許取得試験(実技と学科・現行は実技免除)への受験資格の取得が義務付けられました。押圧法は、創始者の浪越徳治郎先生が、医学的に有効活用できる知識と技術の習得に、専修でも4~6年間の修業年数を提案された手技です。浪越徳治郎先生は、この独自の手技を2年間で、あん摩・マッサージと共に習得することは困難と判断され、指圧師法の独立を請求請願されました。しかし国は指圧師法の独立を認めず、あん摩・マッサージ・指圧師免許は統一されました。修業は2年間、修業後に試験を実施、合格者に免許を与えると定めました。

指圧実技教員不足

法制化後の専修は許されず、全国の各種学校では国の認可を受けるためにも異なる3種の教育を行なう教員が不可欠となりました。特に実技指導のための教員育成は急務となりました。あん摩やマッサージは歴史も長く、すでに公的な資格で、全国に人材も多く、実技指導教員の育成は容易でした。しかし、法制化当時の指圧は歴史も知名度もなく、医学的有効性を示した押圧法の技術修得者や実技指導者は少数でした。創始者である浪越徳治郎先生さえ法制化以前は、あん摩師の鑑札で業を営まれていました。当然ですが、法制化以前の法文には指圧師の名称さえ存在しません。3種の手技教育が義務化されたことで、全国の学校認可および修業後に各都道府県で実施する実技の試験官に指圧技術修得者の採用が不可欠になりました。指圧実技修得者(教員や試験官候補)の不足や実技指導教員の育成期間の長さを懸念する声や数年の著しい指圧実技指導教員や指圧実技審査の試験官不足を危惧する声が上がりました。しかし、現実には、指圧実技の指導教員や試験官が不足する事態は生じませんでした。

国の奇策(医学的有効性の撤回)

国は医学的有効性を証明した手技(押圧法)が、あん摩やマッサージとは異なる手技であることを認め、その名称を法文用語で『指圧』と呼ぶことを定めました。 しかし、国は法制化を進めるうちに、奇策としか思えない方針を打ち出しました。それは、指圧の意味内容を「流派を問わず、指で圧すれば指圧」としたのです。法制化の準備段階で『医師以外の者が行っても有効であることを、証明せよ』と数百種類の療法を法制化から排除した条件を国は“自ら撤回”したと受け取れる内容です。その結果、全国的に “にわか指圧実技指導教員”が続々と生まれました。国の指導に基づき「指で圧すれば指圧」と、あん摩の一法である『圧迫法』が指圧と称され、教授されました。指圧に重要な、『如何に押すか』が軽視され、『何処を圧すか』が重視されています。被術者の身体に指を突きたてて「エーィ」と全体重を乗せる。被術者が「痛い」というと「どーだ、効くだろう」というのが指圧効果と認識され世の中に普及してしまいました。1992年まで行われた『あん摩・マッサージ・指圧』で、実技試験の対象として指圧が審査されることは稀でした。全国の各種学校学生は、実技試験のため『あん摩実技の習得』に励みました。

にわか指圧実技指導教員の活躍

法制化から50年過ぎました。国の指導に基づき社団法人・東洋療法学校協会(全国35校が会員)が発行している“あん摩・マッサージ・指圧理論”の教科書に 『指圧(押圧法)』とか『指圧法の基本手技は押圧操作と運動操作の2法』と記載され、『押圧法』とか『押圧操作』という用語は見られますが、『押圧法』の創始者や『押圧操作』の独自性についての解説はありません。徳治郎先生が少年時代に創始された押圧法は、法制化の準備段階で医学的な有効性を証明し、法文に『指圧』という名を残しました。しかし、法制化後は“にわか指圧実技指導教員”の活躍により、全国に『圧迫法』が指圧として普及しました。本来の指圧である押圧法は、正当な継承者が少なく『流派』の1つと位置付られています。さらに、現況の指圧認識は『圧せば指圧』が一般的です。押圧法とは関わりがない機械や器具までが指圧という名称を付けて“指圧器具”と呼ばれるに至っています。“あん摩・マッサージ・指圧理論”の教科書に記載された『押圧法』や『押圧操作』が正しく解説され、正しい実技指導が行なわれることは殆ど望めないようです。現在、指圧の基本手技は、全国に生まれた“にわか指圧実技指導教員”の手により、あん摩の一法である『圧迫法』に改められて、脈々と受け継がれています。押圧法は国の指導に基づく授業では習得できない技術となってしまいました。

押圧法は独自の手技です

法制化後、指圧の意味内容は「流派を問わず、指で圧すれば指圧」と定義され、その結果、あん摩の一法である『圧迫法』が主流となり、指圧と称されて世界に普及しています。しかし、本来の指圧である『押圧法』は、あん摩・マッサージとは異なる独自の手技です。多くの手技療法が成し得なかった、国に対する医学的有効性の証明を行なった実績を持つ手技です。押圧法は医療のための手技で、技術習得には、独自の定義を守り、基本の基礎から習練し、高度な技術を積み上げていくことが不可欠です。詳細は別項で解説しますが、有資格者であっても一朝一夕での習得は困難です。しかし、親子という『ごく自然で、特別な関係』が独自で高度な押圧法を、容易にお母さんに習得させてくれることも事実です。

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【高度な技術が必要です。危険ですから、絶対にまねをしないで下さい】


安全のための自支

押圧法は、乳幼児から高齢者まで安全に施術する技術です。その基本の基礎となるのが、押圧法(独自)の施術者自身が自分を支える、自支操作です。写真は押圧法による腹部指圧です。施術者が自分で自身を支えていなければ、徳治郎先生のお腹に施術者の全体重がかかってしまいます。これは、ご高齢の徳治郎先生に限らず、危険な行為となります。施術者の指が徳治郎先生のお腹に深く入っていること、徳治郎先生が無防備な(立膝)姿勢であること、さらに、笑顔で会話ができる程、押圧法には苦痛が伴わないことを理解して頂けると思います。もちろん、自支操作のみでこのような施術が可能なのではありません。押圧法には自支操作を始め、他に類のない独自の手技が多くあります。これらが押圧法を他と区別し、疾病治療に有効で安全な手技とします。

本講座では、保護者の片膝立ち姿勢での施術を厳重に禁じています。
高度な技術が必要です。危険ですから、絶対に真似をしないでください。

お母さんは特別です

お母さんが、【押圧法による脳性麻痺児の指圧講座】を受講し、実践し、効果をあげるために必要なことは押圧法に対する認識です。押圧法が最も安全で高度な医療のための指圧治療法であることを認識していただければ、詳細まで学習していただく必要はありません。なぜなら、お母さんは“お子さん”にとって特別な存在だからです。親子という、『ごく自然で特別な関係』は、子供が嫌がる苦痛を与えない限り無防備です。親子という、『ごく自然で特別な関係』には、絶対的で揺るぎない信頼関係があります。【参照:脳性麻痺児になぜ指圧なのですか】

押圧法の真髄

押圧法の真髄に『診断即治療』があります。これは、診断と同時に治療を行なう押圧操作技術です。しかし、『即座に診断し、治療を施す』という意味ではなく、押圧法でいう『診断』とはあらゆる情報収集を意味し、『治療』とは、それらに対応する対処法を意味します。押圧法の『診断即治療』とは、押圧操作技術に対する専門的用語と理解してください。『診断即治療』の技術は、被術者を心身ともに無防備な状態へ導くことさえ可能となります。被術者の心身が無防備になれば押圧効果は最大限に発揮されます。押圧法の劇的とも表現される指圧効果は、この技術により獲得できるものです。この技術の認識や習得なしに押圧効果を語る意味さえないのです。私たちは『診断即治療』技術の習得に基本の基礎から積み上げる必要があります。しかし、親子という、『ごく自然で特別な関係』は、難局を容易に打開します。お母さんには最も重要な要素が多く備わっていることを確認してください。お母さん、あなたは“お子さん”にとって特別なのです。

押圧操作に腕力は不要です

一般に、指圧を行なうためには優れた腕力や並外れた筋力が必要と考えられているようです。『指圧は体力勝負』と語る指圧師も現実に、少なくはありません。これは、押圧法(本来の指圧)が圧迫法(あん摩の手技)と混同され、伝えられているためです。押圧法の創始者で、生涯現役であった浪越徳治郎先生は小柄で(身長160㎝位)お世辞にも“筋肉質”とは呼べない体格でした。押圧操作には、特定の筋肉や筋力に頼らず、同一姿勢を保持し、安定し精密操作を繰り返す、“支点や力点を定めない”基本作りや身体操作の習得が不可欠となります。
押圧操作は身体のバランスで行ないます。押圧操作に優れた腕力は不要です。

押圧操作は器用さも必要としません

圧迫法(あん摩・マッサージ)では、圧排動作と呼ばれる手指操作が基本となり、押圧法(指圧)の手指操作の基本は把握動作です。但し、“あん摩・マッサージ・指圧理論”の教科書にも記載されていない動作法ですから、あん摩・マッサージ・指圧の有資格者でも圧排動作と把握動作に対する認識は極めて低いようです。
押圧法において、圧排動作と把握動作を明確に区別することは基本の基礎で、圧排動作と把握動作とで、手指操作に求められる器用さは異なります。詳しくは別項で説明いたします。押圧法の把握動作では、器用さは重要とはなりません。 他に押圧操作には抗重力機能や推進機能、単関節筋・多関節筋といった知識も重要となります。これは脳性麻痺児の運動機能改善において必要な内容です。専門用語が並ぶと難解に思えますが、個別に指導を行ないますので手指操作や用語は容易に理解できます。非力や不器用を気にせずに参加してください。

わが子のための指圧講座です

押圧法による脳性麻痺児の指圧講座は、わが子のための指圧講座です。
お母さんだから習得できる、押圧法の特別講座の入り口です。